Question
平成30年税制改正大綱が発表されたと聞きました。
平成30年税制改正大綱の概要を教えてください。
Answer
(1)税制改正大綱とは
税制改正大綱とは、翌年行われる日本の税制改正の考え方をまとめている文書になります。
例年、12月中旬ごろに自民党・公明党より発表されており、平成30年の税制改正大綱については、12月14日に発表されました。
内容については与党の税制調査会の場において話し合いが行われて決定されます。
この発表された大綱の内容が、翌年1月に行われる通常国会に税制改正関連法案として提出されることになります。
そのため、翌年以降の税制がどのように変更されていくことになるかを把握するためには、税制改正大綱の内容について把握する必要があります。
(2)平成30年税制改正の考え方
働き方の多様化を踏まえ、特定の働き方だけでなく、様々な形で働く人をあまねく応援し、「働き方改革」を後押しする観点から、 個人所得課税について、これまで検討を重ねてきた見直しの方向性に沿って、給与 所得控除・公的年金等控除の制度の見直しを図りつつ、一部を基礎控除に振り替えるなどの対応を行うこととしています。
デフレ脱却と経済再生に向け、生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しする観点から、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置及び地域の 中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置を講ずることとしています。
また、中小企業の代替わりを促進するため、事業承継税制を 10 年間の特例措置として抜本的に拡充する改正も行う予定となっています。
その他、一定の改正が行われる予定となっております。
なお、税制改正大綱の全文は下記リンク先よりご確認ください。
・平成30年税制改正大綱
(3)主要改正項目
①個人課税
今回の個人課税の見直しにおいては、働き方の多様化への対応とともに、所得再分配機能の回復の観点から、各種控除の見直しが行われることとなりました。今後も 所得再分配機能の回復や税負担のあり方の観点から、引き続き見直しを継続していくことも明示されています。
個人所得課税で改正が行われる主な項目は下記の通りです。
・給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替
・給与所得控除の見直し
・公的年金等控除の見直し
・基礎控除の見直し
・青色申告特別控除の見直し
②法人課税
今回の法人課税の見直しについては、企業が自己の収益を生産性向上のための設備投資や人材投資に振り向け、持続的な賃上げが可能となる環境を作り出す観点から行われるものになります。
法人課税で改正が行われる主な項目は下記の通りです。
・情報連携投資等の促進に係る税制の創設
・所得拡大促進税制の改組
・大企業の租税特別措置法の税額控除適用要件の見直し
・組織再編税制の適格要件の緩和
・収益の認識基準等について
・租税特別措置法の適用期限延長
③資産課税
今回の資産課税の見直しについては、日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上の観点から行われるものになります。
また、一定の租税回避行為を防ぐための各種規定の見直しも行われています。
資産課税で改正が行われる主な項目は下記の通りです。
・一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し
・小規模宅地等の特例の見直し
・事業承継税制の特例の創設等
④国際課税
今回の国際課税の見直しについては、日本企業の健全な海外展開を支えることにより海外の成長を国内に取り込むとともに、国際的な脱税や租税回避に対してより効果的に対応していくためのものになります。
「BEPSプロジェクト」の合意事項が盛り込まれたBEPS防止措置実施条約やOECDモデル租税条約を踏まえ、国 際合意に則り必要な制度改正を行うこととされました。
国際課税で改正が行われる主な項目は下記の通りです。
・恒久的施設(PE)関連規定の見直し
・タックスヘイブン税制の見直し
⑤消費課税
・国際観光旅客税の創設
・輸出物品販売場制度の見直し