概要

設計業などの売上原価が生じない会社は、製造原価報告書を作成する製造業などとは異なり、通常は原価計算を行っていません。そのため、会計上、棚卸資産を認識しないケースが多いと考えられますが、法人税の計算上、人件費などの固定費について棚卸資産として資産計上すべきかどうか疑問が生じるでしょう。今回は、設計業などの人件費の損金算入時期について解説を行いたいと思います。

当社は設計業を営んでおります。設計は社内で完結しており外注などは特になく、会計上、棚卸資産として計上すべきものはないと理解しております。
期末において、進捗途中の設計業務が存在するのですが、法人税の計算上、人件費などの一般管理費を棚卸資産として計上すべきなのでしょうか?

その進捗途中の設計業務に対応する原価の額は、原則として、その設計業務の報酬を益金の額に算入する事業年度の損金の額に算入することとされていることから、棚卸資産として計上すべきものになります。
ただし、下記の①、②のいずれかに該当する費用については、継続適用を要件として、その支出の日の属する事業年度の損金の額に算入することができることとされていることから、これらの費用については棚卸資産として認識しなくてもよいと考えられます。

①固定費の性質を有する費用
②変動費の性質を有する費用のうち一般管理費に類するものでその額が多額でないもの及び相手方から収受する仕度金、着手金等(一定のものに限る)に係るもの

したがって、人件費のうち固定給部分及び残業代でその額が多額でないものについては、棚卸資産として認識せず、損金の額に算入されると考えられます。

(1)内容

売上原価などの原価の損金算入時期は、原則としてその原価に係る売上を益金の額に算入した事業年度となります。

ただし、設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額のうち、下記の①、②のいずれかに該当する費用については、継続適用を要件として、その支出の日の属する事業年度の損金の額に算入することができることとされています。
①固定費の性質を有する費用
②変動費の性質を有する費用のうち一般管理費に類するものでその額が多額でないもの及び相手方から収受する仕度金、着手金等(一定のものに限る)に係るもの

ご質問のケースは、設計業であることから、上記①、②のいずれかに該当する費用については、棚卸資産として計上する必要はないと考えられます。
人件費は固定部分(固定給)と変動部分(残業代)が合算されていますが、これらを固定費・変動費に分解することができるものと考えられます。
そのため、人件費のうち固定給部分及び残業代でその額が多額でないものについては、棚卸資産として認識せず、損金の額に算入されると考えられます。

(2)この取扱いの趣旨

設計、作業の指揮監督、技術指導などの業種において、会計上、棚卸資産を認識するケースは少ないと考えられます。これは、主となる費用が人件費などの一般管理費であり、材料等が生じず、製造原価報告書等の作成も行わないのが通常であることから、棚卸資産を認識しないケースが多いと考えられます。

また、設計、作業の指揮監督、技術指導などの業種において、人件費などの費用を、それぞれどの業務の報酬に対応しているか計算を行い原価を算出するのは、実務上困難であると考えられます。

以上の理由から、このような取扱いが認められていると考えられます。

なお、明らかな原価については会計上も売上原価として計上する必要があると考えられます。また、期をまたぐプロジェクトに係る原価については棚卸資産として計上を行うべきでしょう。法人税については、この取扱いの対象となる費用以外の費用については、棚卸資産を認識する必要があります。

(3)用語の意義

①固定費とは
作業量の増減に関わらず変化しない費用をいいます。
例えば、人件費のうち固定給部分、減価償却費、福利厚生費、地代家賃などの費用が固定費に該当すると考えられます。

②変動費とは
変動費とは作業量に応じて変動する費用をいいます。
例えば、人件費のうちの残業代、旅費交通費などの費用が変動費に該当すると考えられます。

【参考法令等】

法人税法22条
法人税法基本通達2-2-9

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