概要

貸付金の債権について債務免除を行う場合、法人税の計算上、原則その債務免除額を寄附金(寄付金)として認識することとなります。

しかし、経営状況が悪化しているなど一定の要件を満たす子会社等に対して有する債権について債務免除を行う場合、寄附金として取扱わなくてよいとされています。

今回は、赤字経営が続いている子会社に対して有している債権について債務免除を行う場合の取扱いについて解説を行います。

Question

6年前ほどから業績が低迷している当社の100%子会社であるA社が現在債権が困難なほど赤字経営が続いております。
そのため当社はA社に対する債権を放棄することし、また他社に対する債務の一部も当社が負担したうえで解散することとなりました。
この場合の債権放棄、債務引受の法人税の取り扱いを教えてください。

Answer

(1)結論

その債権放棄、債務引受については、寄附金に該当せず損金の額に算入されると考えれられます。

(2)理由

下記の①及び②の要件を満たす場合、その子会社の整理にかかる損失は寄附金に該当せず、支出した事業年度の損金として取り扱われます。
①子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い行われる債権放棄、債務引受であること
②今後より大きな損失を回避するためにやむを得ず行われた債権放棄、債務引受であり、それが社会通念上明らかであると認められるものであること

ご質問のケースは、これら上記の要件を満たしていると考えられることから、その債権放棄、債務引受については、寄附金に該当せず損金の額に算入されると考えれられます。

子会社等が業績不振等の理由により債務超過となっており、かつ、業績が回復しないと考えられる場合には、親会社はその子会社を整理するか、支援を行う意思決定をするのが通常であると思われます。
そのような場合において行われる支援については、寄附金に該当しないことを法人税法基本通達において明示されております。

子会社は債務超過に陥っていることから資金は枯渇しており、その債務の全てを弁済することは困難な状態でしょう。
親会社は株主の有限責任を主張して子会社の債務を負担しないことも可能でしょう。
しかしこのような債務を負担しない行為をとるのは、親会社が社会的な責任を放棄しているのと同等の行為を行なっていることになるため、多くの親会社では子会社の整理にあたりその子会社の債務を引き受けることでしょう。
そうした債務の引き受けについて法人税上寄附金に該当しないように、法人税法基本通達において明示されています。

なお、過剰な支援はもちろん寄附金に該当するため、その支援金額(損失負担額等)が合理的な金額であるかどうかの検討は十分にすべきであるでしょう。
例えば、子会社が負担することができるような金額についてまで親会社が負担する場合には寄附金に該当すると考えれられます。

(3)グループ法人税制との関係

法人による完全支配関係がある内国法人同士の寄附及び受贈は、原則寄附を行なった法人については全額損金不算入、受贈を受けた法人は全額益金不算入とされます。
しかし、ご質問の親会社が行う支援にかかる損失は法人税上は寄附には該当しないとされ、損金の額に算入されることとなります。

この場合、寄附側において損金算入されるが受贈を受けた側においては益金不算入とされるのかという疑問が残ります。
支援を行なった親会社側において寄附に該当しないとされる場合には、支援を受ける子会社側の受贈益については益金の額に算入すると定められております(正確には益金不算入の適用がないこととされています。)。
あくまで、益金不算入とされる受贈益は法人税法37条7項に規定する寄附金の額に対応するものに限られており、この場合には、この寄附金に対応する受贈益に該当しないことから、益金の額に算入されることとなります。

(4)留意点

①寄附金問題について
親会社が子会社に対して金銭の貸付等を行う場合、十分な担保等を用意しなくてもその関係性からその貸付が実行されることがあります。
また、債務超過に陥った理由がその子会社だけでなく親会社の責任である場合もあり、その貸付について特段回収の努力を行わないケースもあるでしょう。
このように、親会社と子会社間の貸付は、通用の貸付と性質を異にするものであり、第三者との貸付と同様に債務超過が相当期間継続していて返済の見込みがないからといって書面により債権放棄を行なったとしても、後日行われる税務調査等により寄附金に該当するのではないかと指摘を受けるケースも少なくはありません。

①子会社等について
今回のご質問のケースは100%の子会社でしたが、この取扱いは子会社等に該当する法人について適用があります。
この場合の子会社等とは、その法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれることとされています。
そのため、単純に資本関係だけで判断するのではなく、実質的にその子会社等を支配しているかどうかにより判断していくこととなります。

【参考法令等】

法人税法25条の2
法人税法基本通達9-4-1

 

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