Question
寄附の行為に類似しているが、法人税法上寄附金(寄付金)に該当しないものについて教えてください。
Answer
(1)概要
資産の贈与、経済的利益の無償の供与は原則的に寄附金に該当しますが、広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものについては、寄附金に該当しないとされております。
これは、これら広告宣伝等の費用については事業上必要な経費であることからこのような取扱いになっております。
(2)具体的な取扱い
それぞれの具体的な取扱いは下記の通りです。
①交際費等 ・・・ 交際費等については別規定により一定の金額については損金不算入となります。
②広告宣伝等、福利厚生費に該当するもの ・・・ それぞれ損金に算入されます。
③固定資産の取得に関連して支出する地方公共団体に対する寄附等 ・・・ 資産の取得価額に算入されます。
④被災者に対する一定の義援金等 ・・・ 損金に算入されます。
⑤子会社等を整理する場合の損失負担等 ・・・ 発生時に損金に算入されます。具体的な事例はこちらをご確認ください。
⑥役員、使用人など、個人が本来負担すべきもの ・・・ 負担すべきものの給与(役員の場合は、事前確定届出給与の届出を提出してない場合は損金不算入)として取り扱われます。
(3)寄附金と交際費の区別について
交際費等とは、得意先、仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。
しかし、寄附金は、資産の贈与、経済的利益の無償の供与をいいます。
寄附金と交際費等はその行為が似ていることから、そのいずれに該当するか判断をすることが難しいケースも多いことでしょう。
そのため、贈与を行なった場合には、その贈与について実態をよく検討した上で交際費等に該当するか寄附金に該当するかの判断を行なっていく必要があるでしょう。
なお、直接事業に関係のない社に対する金銭贈与(例えば、政治団体や社会事業団体、神社)については、原則的には寄附金に該当すると考えられます。
このような見返りを求めないような金銭や物品の贈与については寄附金として取り扱われることになります。
(4)広告宣伝費が寄附金に該当しない理由について
広告宣伝費とは、不特定多数の者に商品等を宣伝するために行われる行為に係る費用であり、例えば試供品や試作品の配布も含まれます。
試供品等の配布は、資産の贈与に該当することから、単純に考えると法人税上寄附金に該当することになります。
しかし、このような行為は商品等を世の中に宣伝を行い売上をアップさせる目的で行われるものになります。
そのため広告宣伝費は、法人税上寄附金に該当しないとされています。
なお、特定の者についてのみ対象とする試供品の配布については、税務調査において寄附金と指摘を受けるリスクがある点、ご注意ください。
(5)寄附金の損金算入限度額について
支出した寄附金のうち一定の方法により計算した損金算入限度額を超える金額については損金不算入とされます。
(6)まとめ
金銭や物品などを贈与した場合には、その贈与が寄附金、交際費等のみでなく、広告宣伝、福利厚生費に該当しないかどうかも検討する必要があるでしょう。
その贈与がどのような費用に該当するかにより、課税所得の金額が異なることとなるため、金銭や物品などを贈与した場合、それが寄附金になるのかそれとも交際費等や広告宣伝等になるのかは、その贈与について実態をよく検討した上で判断を行なっていく必要があるでしょう。
【参考法令等】
法人税法37条7項