Question
当社は、以前より多額の欠損金を有していた子会社に対して増資を行い、その後、その増資を行ったことにより取得した株式を譲渡することにより、多額の譲渡損が生じることとなりました。
この一連の取引で税務上問題(寄附金課税等)となる点はありますでしょうか。
Answer
株式の譲渡損を発生させることを目的として子会社に対して額面金額を超える金額の増資を行った場合には、その額面金額を超える部分の金額については、寄附金課税の対象となると考えられます。
寄附金とは、「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝費等一定のものを除く)をした場合における、その金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額」をいうとされています。
このように、法人税における寄附金は、民法上の贈与にがぎっておらず、通常の寄附金の概念より広いものとなっており、今回行った増資が、この寄附金に該当するか否かを検討する必要があります。
子会社が業績不振となり、財政状態が悪化した場合において、通常、親会社はその子会社に対して支援を行う、整理を行う等の意思決定を行われると思います。
その支援の一環として増資というものがあると考えられますが、債務超過に陥っている会社の株式時価は、純資産等を参酌して計算する場合0円になると思われます(DCF法等の他の評価方法を採用する場合には、異なる時価になることも考えれます。)。
そのため、増資した金額の全額が、額面金額を超える金額となると考えられますが、これについては、親会社として増資を子会社支援のためにやむおえず行っているものであるため、一概に寄附金に該当するとはいえないと考えられます。
しかし、ご質問のケースですと、増資直後にその子会社の株式を譲渡していることから、子会社支援のために増資が行われたのではなく、税の負担を軽減するために行った租税回避行為であると考えられます。
したがって、額面金額を超える金額の増資については、経済取引として是認できる合理的理由はないと考えられ、寄附金課税の対象となると考えられます。
なお、法人税法上の寄附金に該当するとされる支出については、一定の金額については損金算入が制限されることとなります。
【参考法令等】
法人税法37条⑦