EUの付加価値税(VAT、消費税)の納税義務者、課税対象取引、課税地を教えてください。
ご質問のEU付加価値税(VAT、消費税)の納税義務者、課税対象取引、課税地は、それぞれ下記の通りになります。
(1)納税義務者
資産の譲渡または役務の提供を行う課税事業者
(2)課税対象取引
下記の取引について課税されます。
① 資産の譲渡および役務の提供
② EU域内取得
(3)課税地
① 資産の譲渡
原則として、資産の譲渡が行われた時点で資産が所在する場所など
② 役務の提供
1. BtoB取引の場合:原則的には、顧客の所在地
2. BtoC取引の場合:原則的には、供給者の所在地
③ EU域内取得
EU域内取得の課税地は、当該資産の輸送の終了時に資産が所在する場所
④ 輸入
原則として資産がEU内に持ち込まれた時点で所在するEUの加盟国の場所
(1)概要
EU各国における付加価値税(VAT、消費税)制度については、原則的な税率を定めた上で、食品等一定の分野には軽減税率が認められている複数税率制度を導入しており、この点は日本の消費税制度と大きく異なります。
また、税率についても、各国で差異はあるが、通常は15%以上となっており、日本の消費税率8%とは大きな乖離があります。
付加価値税の域内における共通基盤は、理事会指令2006/112/EC(VAT指令)により規定されており、同指令は、先行指令である理事会指令77/388/EECや、加盟国の売上高税法の調和に関する指令67/227/EECを含む一連の関連法をまとめたもので、課税対象者、課税取引、課税地、課税対象事項、控除などの要件を規定しているものです。
(2)納税義務者
EU各国における付加価値税(VAT、消費税)の納税義務者は、原則として、資産の譲渡または役務の提供を行う課税事業者になります。
この場合の「課税事業者」とは、事業を行う場所や目的、結果を問わず、独立して経済活動を行う全ての者を意味し、経済活動とは、製造、流通、サービスの提供に含まれる全活動で、鉱業、農業、専門的な業務を行う個人、事業者の全てが含まれ、所得獲得のために継続的に有形または無形資産を利用することも含まれます。
なお、例外として、リバースチャージが適用される場合には、納税義務が課税事業者である資産の取得者または役務の受益者に転嫁されることとなります。
また、加盟国によっては、課税事業者の概念を拡大し、財務的、組織的につながりのある課税事業者のグループを1つの課税事業者として取り扱う、VATの連結納税システムを導入している国もあります(日本での法人税課税で選択の余地のある連結納税制度のようなもの)。
(3)課税対象取引
EU各国における付加価値税(VAT、消費税)の課税対象取引は、下記の通りです。
① 資産の譲渡および役務の提供
各EU加盟国内で、課税事業者が、原則として有償で行われるされる資産、役務の取引に対してそのVAT負担を求めるものであり、各EU加盟国内において行われる取引のみがVAT課税の対象となります。
よって、無償の取引や課税事業者以外の者が行う取引は課税の対象とはなりません。
② EU域内取得
EU域内取得とは、以下、全ての要件が満たされる取引です。
1. 対象となる資産がある加盟国から他の加盟国に物理的に移動すること
2. 対象資産が取得者へ輸送されること
3. サプライヤーまたは取得者自身が輸送を行うか、これらから委任を受けた者が対象資産の輸送を行うこと
(4) 課税地
EU各国における付加価値税(VAT、消費税)の課税地は、下記の通りです。
① 資産の譲渡
1. 輸送を伴わない資産の譲渡の課税地:原則として、資産の譲渡が行われた時点で資産が所在する場所
2. 輸送を伴う場合の資産の譲渡の課税地:原則として、 輸送の開始時に資産が所在する場所
② 役務の提供
2010年1月以降、サービスの供給に関する新しい規定が導入され、原則として、その消費地が課税地となります。
1. BtoB取引の場合:原則的には、顧客の所在地
2. BtoC取引の場合:原則的には、供給者の所在地
上記はあくまで原則的な取り扱いであり、例えば、BtoCに該当する電子サービス取引については、2015年1月より施行されている条項に基づき、顧客の所在地やPEの住所が課税地となります。
③ EU域内取得
EU域内取得の課税地は、当該資産の輸送の終了時に資産が所在する場所とされています。
④ 輸入
輸入の課税地は、資産がEU内に持ち込まれた時点で所在するEUの加盟国の場所とされています。
ただし、例外として、資産が保税手続を要する場合は、保税手続が終了した時点で当該資産が所在する場所が課税地とされています。