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概要

法人税法上、損失は、「その事業年度において発生した損失でした資本取引以外の取引にかかるもの」については、損金の額に算入されることとされています。
しかし、使用しておらず、今後使用することが明らかでない固定資産等について、実際には処分は行なっていなくても一定の除却処理を行うことができるとされています。(これを「有姿除却」といいます。)
この有姿除却について今回は解説を行います。

当社は製造業を営んでいる法人です。前期以前はA商品を製造していたのですが、当期首より諸般の事情により製造を中止することとなりました。また、今後もA商品を製造することはないと考えております。A商品の製造専用の機械装置を4年ほど前より保有しておりますが、処分費用が高額であることから、実際に処分を行うのは翌期以降としたいと思っておりますが、当期課税所得が多額に発生する見込みであることから、除却損については当期計上したいと考えております。
この場合、除却損を当期計上することはできるのでしょうか?
なお、この機械装置はA商品を製造する以外の用途には使用することができません。

ご質問の機械装置について、法人税法基本通達7-7-2に基づき除却損を計上することができると考えられます。
この場合において計上することができる除却損の金額は、その機械装置の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額となります。

(1)有姿除却の可否

下記のような固定資産については、たとえその資産につき、解撤、破砕、廃棄等を行なっていない場合であっても、除却損を損金の額に算入することができるとされています。

①その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
②特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの

ご質問の機械装置については、その使用を当期首において廃止しており、A商品以外の商品を製造することができないことから、今後通常の方法により事業のように供する可能性がないと認められると考えられます。そのため、有姿除却処理を行うことができると考えられます。

(2)有姿除却の除却損額

有姿除却を行う場合の損金の額に算入することできる金額は、その資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額とされています。
処分見込控除額を差引く必要がある点、ご留意ください。
なお、この処分見込控除額は内部計算により算出することができるものではないことから、その有姿除却を行う事業年度終了の時点において実際に除却を行う場合の処分見込価額の見積もりを業者などに依頼して出していただく必要があるでしょう。

(3)まとめ

法人税法上、有姿除却の要件はかなり厳しいものとなっております。そのため、適用の可否については慎重に判断をする必要があると考えられます。
ご質問のような機械装置についてはA商品以外の商品を製造することができないことから、有姿除却の適用をすることができると考えられますが、より一層今後使用することできない状態にする目的であえてその固定資産の重要な部分を物理的に破壊することもひとつの手だと考えられます。その機械装置の動作をつかさどる部分などの最も重要だと考えられる部分を破壊すれば、その価値を喪失を客観化することができることから、税務的なリスクを減少させることができると考えられます。

【参考法令等】

法人税法基本通達7-7-2

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