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(1)概要

耐用年数を検討する際、建物と建物附属設備の区分について悩まれる方が多いかと思います。。
また、土地と建物を一括購入した場合には、取得価額の按分についても検討する必要があります。
どこまでを建物にして、どこからを建物附属設備にすべきか、これらの区分を誤ってしまうと異なる耐用年数を用いて減価償却費が計算されてしまい、また土地については非課税仕入れになることから、消費税計算にも影響を与えることとなります。。
そのため、この按分計算については慎重に検討を行うべき論点になります。
しかし、法令上、これらの区分についての明確な基準等が設けられていません。
そのため、どのように取り扱っていくか非常に悩ましい論点になります。
なお、建物に区分するより、建物付属設備に区分をした方が耐用年数が短くなることから、早期に減価償却費を計上することができるメリットがあります。

(2)売買契約書に明記されている場合

売買契約書に土地、建物、建物附属設備の金額がそれぞれ区分されて明記されている場合は、その金額を使用して土地、建物及び建物附属設備の取得価額にそれぞれ按分します。

なお、売買契約書に明記されている金額が時価と乖離している場合には、下記「(3)売買契約書に明記されていない場合」と同様の方法により取得価額を按分する必要がある点、留意ください。

(3)売買契約書に明記されていない場合

①概要

売買契約書に建物と建物附属設備の金額がそれぞれ区分されて明記されていない場合は、合理的な割合を用いてそれぞれに按分する必要があります。
工事見積書などの詳細なデータを入手することができる場合には、それを基礎として資産の区分を検討すればいいでしょう。
具体的な按分の解説の前に「建物」、「建物附属設備」がどのようなもであるか検討する必要があるでしょう。

(a)建物について

税法上、建物について明確な定義はありません。
「固定資産の耐用年数の算定方式(昭和26年大蔵省主税局)」によりますと、「建物は防水、床、外装、窓及び構造体の部分からなるもの。防水、床、外装、窓及び構造体の部分のうちいずれかが欠けても建物とならない。」とあります。
つまり、建造物を維持するために必要なものが建物に該当すると考えられ、この考えに従って建物部分の取得価額を算出することが合理的であると考えられます。

(b)建物附属設備について

建物附属設備についても、税法上、明確な定義はありません。
しかし、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一」において、建物附属設備の区分に下記のような記載があります。
・電気設備(照明設備を含む。)
・給排水又は衛生設備及びガス設備
・冷房、暖房、通風又はボイラー設備
・昇降機設備
・消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備
・エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備
・アーケード又は日よけ設備
・店用簡易装備
・可動間仕切り
当然のことですが、これらに該当するものについては建物ではなく建物附属設備に該当するものであると言えます。
共通することは、建物の一部として成り立っているものではなく、その建物の価値を向上される目的で取り付けられている設備になると考えられます。

②工事見積書等のデータを入手できる場合

工事見積書等のデータを入手することができる場合、その工事の項目ごとに区分されそれぞれの金額が明記されていることが一般的です。その金額を用いて按分計算を行うことにより、建物と建物附属設備の区分を合理的に行うことができると考えられます。
ただし、中古物件を購入した場合、新築当初の工事見積書を売主から提供してもらうことは通常できないでしょう。また、仮に入手できたとしても建物と建物附属設備では耐用年数が異なることから償却のスピードが異なることから、新築時のと同じ比で按分するのではなく、それぞれの損耗を考慮した比により按分することにより合理性を確保する必要があると考えられます。

③工事見積書等のデータを入手できない場合

工事見積書等のデータを入手することができない場合、その資産の取得価額総額をその取得時におけるそれぞれの通常の状態における取引価額の比によるなどして、合理的に按分する必要があります。
具体的な按分方法について下記にて解説します。

(イ)step1:支払金額を土地と建物(建物附属設備を含む)に按分する

土地付き建物の物件を購入した場合、まず支払金額を土地と建物(建物附属設備を含む)に按分する必要があります。
この場合、固定資産税評価額を基礎として按分する方法が一般的であると考えられます。これは、土地・建物の双方について同一の機関である地方公共団体が決定しているため合理的であると考えられます。
なお、固定資産税評価額は、3年に1度しか評価替えが行われないことから、評価替えを行なった年度以外の年度に取得を行なった場合には、その評価替えを行なった年度からその取得した年度までの価格変動及び損耗について、その評価額を補正する必要があると考えられます。

(ロ)step2:建物と建物附属設備に按分をする

次のステップとして取得価額を建物と建物附属設備に按分する必要があります。
工事費割合を計算することができる場合とできない場合の取扱いは異なると考えられます。
なお、ここでいう工事費割合とは、建築主が保存する工事請負契約書から把握することができる建物及び建物附属設備の工事費の割合をいいます。

(a)工事費割合を計算できる場合

工事費割合を計算することができる場合、その工事費割合に基づいて取得価額を建物と建物附属設備に按分するのが合理的であると考えられます。
なお、この工事費割合は新築時のものであることから、損耗等を考慮して計算する必要があります。

(b)工事費割合が算出できない場合

工事費割合が算出できない場合、下記のいずれかの方法により取得価額を按分するべきであると考えられます。なお、これらの割合は新築時のものであることから、中古資産である場合には、その損耗等を考慮して計算した割合により取得価額を按分する必要があります。
・同業他社の物件から見積もった建物及び建物附属設備の価額の割合による方法
・販売会社又は建築会社が作成した譲譲渡原価証明等に基づいた建物及び建物附属設備の価額の割合による方法
・再建築費評点数算出表における建物及び建物附属設備の構造別の再建築費表点数の割合による方法

【参考法令等】

減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一
国税不服審判所裁決平成12.12.28
国税不服審判所裁決平成13.2.19

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