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(1)概要

日本では所得発生場所が国内・海外かを問わず、すべての所得について日本で課税される(全世界的課税) こととされております。
そのため、国外で生じた所得について外国の法令において課税の対象とされる場合、同一の利益に対して日本及びその外国の双方で課税されることから、二重課税が発生することとなります。
外国税額控除は、この二重課税を排除するために、その課税された外国法人税について一定の限度額の範囲内において税額控除を行う制度となります。
なお、この税額控除は、法人税のみからだけでなく、地方法人税・都道府県民勢・市町村民税の順で控除できる制度となっております。

(2)損金算入方式と税額控除方式

上記の通り、外国法人税について一定の限度額の範囲内において税額控除を行うことができますが、税額控除ではなくその外国法人税について損金の額に算入する方式も認められています。
外国法人税につき損金算入方式を採用するか税額控除方式を採用するかは、その法人の意思に従うこととなります。
しかし、同一事業年度において複数種類の外国法人税の負担がある場合においては、その負担する外国法人税のすべてについて、いずれか一方の方式を採用する必要があります。
すなわち、一部の種類の外国法人税について税額控除方式を採用して、残りの外国法人税について損金算入方式を採用することは認められておりません。
税額控除方式を採用する場合には、費用計上されている外国法人税の全額について加算調整を行う必要があります。
税額控除方式を採用した方が有利となるケースが多く、実際に外国法人税を納付している場合には、いずれの方式による方が有利になるかシュミレーションを行うことをお勧めします。

(3)外国税額控除の対象となる外国法人税について

①概要

外国税額控除の適用を受けることができるのは、外国法人税のうち所得に対する負担が高率な部分の金額を除いたものになります。
ただし、下記「④外国税額控除の対象とすることができない外国法人税」に記載している外国法人税については、外国税額控除の対象にはなりません。

②外国法人税とは

外国法人税とは、「外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税」をいうとされています。
そのため、日本でいう法人税、地方法人税、法人住民税の法人税割、事業税の所得割などのような外国の税金が外国法人税に該当するとされています。
ただし、各国の税制等を考慮して、下記のような税についても、外国法人税に該当するとされております。

(a)超過利潤税その他法人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
(b)法人の所得又はその特定の部分を課税標準として課される税の附加税
(c)源泉税のような収入金額等を課税標準とする税
(d)法人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代わって、法人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税

しかし、下記のような税については外国法人税に含まれないとされております。

(a)納付を行った後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することができる税
(b)納付が猶予される期間を、納税者が任意に定めることができる税
(c)複数の税率の中から税の納税者と税務当局等との合意により税率が決定された税(もっとも低い税率を上回る部分に限られる)
(d)外国法人税の附帯税その他これに類する税

③所得に対する負担が高率な部分の金額について

所得に対する負担が高率な部分の金額については、外国税額控除の対象とならず損金の額に算入されることになります。
これは、日本の税率より高率な部分の金額については二重課税の問題は生じないためこのような取り扱いとなっております。
所得に対する負担が高率な部分の金額とは、原則として、外国法人税を課す国等においてその外国法人税の課税標準とされる金額に35%を乗じて計算した金額を超える部分の金額をいうとされております。
なお、この計算は外貨ベースで行うことになります。

④外国税額控除の対象とすることができない外国法人税について

通常行われると認められない一定の取引等、一定の取引より生じた外国法人税については外国税額控除の対象とすることはできないとされています。
(詳細は法人税法施行令142条の2⑤から⑧までを参照)

⑤まとめ

外国においては、日本では想定されないような税金が課税されることもあります。
その税金について外国税額控除の適用を受けることができかどうかについては、現地の法令を参照しどのような性質を有しているものかを把握したうえで、法人税法施行令に当てはめていく必要があると考えられます。
また、外国法人税の定義に該当したとしても、外国税額控除の対象とならないものもございますので、ご注意ください。

(4)外国税額控除の適用時期

外国税額控除の適用を受けることができる時期は下記の通りになります。
①原則:外国法人税を納付する税額が確定した時の属する事業年度
②例外:継続して外国法人税額を費用計上した日(外国法人税を納付した日等)の属する事業年度

詳細は下記リンク先をご参照ください。

【参考法令等】

法人税法41条
法人税法69条
法人税法施行令141条、142条の2
法人税法基本通達16-3-1

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