(1)概要

従業員の士気向上等を目的として社員旅行などのイベントを開催したり、労働環境を整えるために行われる社内サービスなどの福利厚生費支出することは一般的に行われていると思います。
今回は福利厚生費について、法人税・所得税の取扱いを解説したいと思います。

(2)福利厚生費とは

福利厚生費とは、税法上、明確な定義は存在しません。
福利厚生費は会社が従業員のために任意で提供するもので、例えば、忘年会、新年会、社員旅行、従業員の結婚祝い、健康診断などのために要した費用は福利厚生費に該当すると考えられます。

(3)法人税の取扱い

福利厚生費は、原則損金の額に算入されます。
なお、福利厚生費は会社が従業員に対して行うサービス等に要した費用であることから、会社側の使用人に対するものは、福利厚生費に該当しないと考えられます。
例えば社長一人の会社で福利厚生費は発生しないことになります。この場合、役員給与に該当すると考えられることから、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当しないときは、損金の額に算入されないこととなります。

(4)所得税の取扱い

①概要

福利厚生費は原則所得税の課税対象となります。
しかし、少額不追求の考えのもと、課税されないものも多数存在します。
基本的に、社員全員がその制度を利用することができ、かつ、常識を超えた金額でない場合には所得税は課税されませんが、これに該当しない場合には課税される可能性があるので、注意する必要があります。
事例をいくつか下記で解説したいと思います。

②課税されない事例

(イ)永年勤続者の記念品

永年勤続した役員又は使用人の表彰を行う場合において、その記念として旅行、観劇等に招待し又は記念品を支給する場合、下記の要件のいずれにも該当するものについては所得税は課税されません。
ただし、現物に変えて金銭を支給する場合は、所得税が課税されます。

<要件>
・その旅行等の金額が勤続期間等に照らして社会通念上相当と認められること
・その表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者をたいしょうとしており、かつ、2回以上表彰を受ける社については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること

(ロ)レクリエーション

役員又は使用人が社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事に参加したことによる経済的利益については、所得税は課税されません。
ただし、行事に参加しなかった者に金銭を支給する場合、その支給する金銭については所得税が課税されます。(業務をしていたことにより参加できなかったとしても課税されます。)

(5)税務調査において

①概要

税務調査において福利厚生費は入念にチェックを受ける可能性があります。
これは、役員が私的に利用した支出であったり、従業員に対する福利厚生費であっても給与課税の対象となると思われる支出が含まれている可能性が高いからです。
仮に給与課税の対象となるものが含まれている場合には、その支出は給与として取扱われることとなります。

②役員の場合

福利厚生費として処理を行なっていた支出について給与であると認定を受けた場合、その支出は定期同額給与等の損金算入要件を満たすものでないと考えられることから、全額損金不算入となります。そのため、修正申告を行う必要があり、法人税・過少申告加算税・延滞税などの附帯税の支払義務が生じます。
また、その支出については給与所得に該当することから、源泉徴収が必要となります。その福利厚生費の対象であった役員から追加で源泉徴収を行い、国に納税をする必要があります。この源泉所得税について追加で徴収を行わずに納税のみ行う場合は、その徴収すべき源泉所得税額が、その源泉徴収の対象となる役員の給与所得扱いになるため留意が必要です。
なお、この場合、法人税・所得税ともに課税されることから税負担が大きくなるため注意が必要です。

③従業員の場合

福利厚生費として処理を行なっていた支出について給与であると認定を受けた場合でも、その支出が従業員に対するものである時は、その支出は損金の額に算入されることから、法人税の計算上は影響は特にありません。
しかし、その支出については給与所得に該当することから、源泉徴収が必要となります。その福利厚生費の対象であった従業員から追加で源泉徴収を行い、国に納税をする必要があります。この源泉所得税について追加で徴収を行わずに納税のみ行う場合は、その徴収すべき源泉所得税額が、その源泉徴収の対象となる従業員の給与所得扱いになるため留意が必要です。

【参考法令等】

法人税法34条④
所得税法基本通達36-21、36-30

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