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Question

海外からの資金還流を行う場合、配当又は利息の支払いにより行うことを想定しています。
配当で行われる場合と利息で行われる場合について、それぞれどのような税務のポイントがあるか教えてください。

Answer

(1)日本の親会社に対する資金/利益の還流方法

海外子会社への資金提供方法は、出資と融資の方法があります。
日本の親会社が外国子会社に出資を行っている場合には、外国子会社から日本の親会社に対し、配当による資金/利益の還流を行うことができます。
そして、外国子会社から日本の親会社に対して配当が行われた場合、一定の要件を満たす場合には、日本の親会社では外国子会社配当益金不算入の適用により配当額の95%が免税となります。(別QAにて解説)
すなわち、資金還流に伴うコストは、配当額の5%部分に日本の法定実効税率を乗じた金額、及び、現地での配当源泉税の合計額となります(外国子会社配当益金不算入の適用を受けている場合、現地での配当源泉税について外国税額控除の適用を受けることはできません)。
一方、日本の親会社が外国子会社に融資を行っている場合には、外国子会社から日本の親会社に対し、利子による資金/利益の還流を行うことができます。
そして、外国子会社から日本の親会社に対して利子の支払が行われた場合には、日本の親会社では利子全額が益金課税された上で、現地での利子源泉税について適用要件を満たす場合には外国税額控除の適用を受けることができます。

(2)資金還流方法の選択(配当or利子)に関する検討ポイント

資金還流方法の選択(配当or利子)に関する主要な検討ポイントは、以下の通りです。
①現地の法人税率及び源泉税率
現地の法人税率が低い場合、利息の場合には、日本の高税率で受取利息課税が生じる一方で、現地の低税率で支払利息に伴う税負担の減少が限定的となるため、相対的に不利となります。
一方、配当の場合には、外国子会社からの配当金であれば95%益金不算入となるため、ほぼ追加税額なしで日本まで資金還流を行うことができます。
ただし、海外子会社が低税率国にある場合であっても、配当源泉税率が高い国の場合には、利息による資金還流を検討する余地があります(ただし、二国間の租税条約の確認も行う必要がある)。
これは、外国子会社益金不算入制度もとでは、配当源泉税は損金算入又は外国税額控除が認められず、配当源泉税相当額が税務コストとなるためです。

②親会社が繰越欠損金を有する場合
親会社が繰越欠損金を有する場合には、日本で計上される受取利息に伴う益金の影響が繰越欠損金に吸収されるため、利息還流が有利になる可能性があります(また、利息支払法人側で損金算入効果を享受できる)。

(4)まとめ

資金・利益の還流方法の違いにより、税金コストへの影響が異なることから、事前にシミュレーション等を行なった上で資金/利益の還流の方針を決定しておく必要があります。
そして特に、源泉税率が税コストに大きな影響を及ぼすことが想定されるため、租税条約の内容の確認を忘れることなく実施する必要があります。
なお、資金/利益の還流を利息の支払いにより行う場合には、過小資本税制及び過大支払利子税制に類似する制度が存在する国もあるので、これらの規定により外国子会社が日本の親会社に支払う利子が、外国子会社の所得金額の計算上損金不算入とならないように留意する必要があると思います。

 

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