fbpx

概要

グループ法人税制が制定されてからかなりの年月が経過しています。
今回は孫会社である株式を親会社に対して現物分配する事例をもとにして、グループ法人税制の制度である適格現物分配について解説を行いたいと思います。

 

 

当社は、以前よりA株式会社の株を100%保有していました。
当期において、A株式会社が保有しているB株式会社の株式を利益剰余金の配当により当社に移転させることを検討しています。
この場合の法人税の取扱いを教えてください。

ご質問のB株式についての剰余金の配当は適格現物分配に該当すると考えられることから、所得金額は生じないと考えられます。

また、A社において源泉所得税についても徴収する義務はないと考えられます。

(1)当社(被現物分配法人)の処理について

<前提>

B社株式簿価 1,000万円(会計上の簿価と税務上の簿価は一致している)
B社株式時価 1,200万円

<会計仕訳>

子会社株式(B社株式)

1,200万円 受取配当金  1,200万円 

 <税務仕訳>

子会社株式(B社株式)

1,000万円 受取配当金  1,000万円 

<税務調整仕訳>

受取配当金

200万円 子会社株式(B社株式)  200万円 

<別表>

<解説>
適格現物分配により資産を受けた場合、受取配当金を認識しますが全額益金不算入となります。
資産については帳簿価額により受け入れを行います。(法人税法62条の5③④)
そのため会計上、時価により資産の受け入れを行なっている場合には、この部分についても税務調整が必要となります。
なお、適格現物分配により受け入れた資産の帳簿価額相当額が、被現物分配法人である当社の利益積立金額の増加額になります。(法人税法施行令9条①四)

(2)A社(現物分配法人)の取扱い

<前提>

B社株式簿価 1,000万円(会計上の簿価と税務上の簿価は一致している)
B社株式時価 1,200万円

<会計仕訳>

その他利益剰余金

1000万円 子会社株式(B社株式)  1000万円 

<税務仕訳>

利益積立金

1000万円 子会社株式(B社株式)  1000万円 

<税務調整仕訳>
税務調整仕訳はない。

<解説>
適格現物分配により資産の移転を行なった場合には、その資産の帳簿価額により譲渡があったものとして法人税を計算することになります。(法人税法62条の5③)
そのため、適格現物分配によりB社株式について譲渡益は生じません。
利益積立金の額の減少額については、その的確現物分配にかかる資産の交付直前の帳簿価額とされています。(法人税法施行令9条①八)

(3)B社(移転株式にかかる会社)の取扱い

移転対象の会社においては、原則、特段処理を行う必要はない。

(4)用語の意義

①完全支配関係
完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式もしくは出資(自己の株式または出資を除く)の全部を直接もしくは間接に保有する関係で一定のものまたは一の者との間に当事者間の完全支配関係がある法人相互の関係をいう。

②現物分配
法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)がその株主等に対しその法人の次に掲げる事由により金銭以外の資産の交付をすることをいう。
イ 剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし、分割型分割によるものを除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるものを除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)
 ロ 解散による残余財産の分配
 ハ 法人税法24条1項5号から7号まで(みなし配当)に掲げる事由

③適格現物分配
内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものをいう。
なお、この定義の通り、現物分配を受ける株主の中に個人の株主が1人でも存在する場合には、すべてが適格現物分配に該当しないことになりますので、その点留意ください。

【参考法令等】

法人税法24条①十二の五の二、十二の七の六、62条の5③④
法人税法施行令9条①四
所得税法24条

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加