(1)概要

平成30年度税制改正において、法人税における収益の認識基準が改正されました。
その改正には、返品調整引当金の廃止が含まれています。
この改正に伴い経過措置も設けられています。
今回は、この返品調整引当金の廃止についての解説を行います。

(2)返品調整引当金について

返品調整引当金とは、当期以前に発生した売上について翌期以降返品が行われることにより減少する利益に対して計上される引当金になります。
法人税上は返品を受け入れる特約を締結している一定の業種についてのみ、返品調整引当金の計上が認められていましたが、今回の改正によりこの返品調整引当金制度は廃止されることとなりました。

これは、会計において収益の認識基準が大幅に改正され、会計において返品調整引当金が廃止されることに伴い、税務上の取り扱いも廃止されることとなりました。

(3)改正前の返品調整引当金の取扱い

①概要

改正前は、内国法人が下記の要件を満たす場合において、買戻による損失の見込み額として、損金経理により返品調整引当金を計上しているときは、下記に記載している繰入限度額に達するまでの金額について損金の額に算入するとされていました。

<要件>
・下記に掲げる対象事業を営んでいること、
・対象事業に係る棚卸資産の大部分につき、当該販売の際のによる買戻に係る特約等を結んでいること

<対象事業>
・出版業
・出版に係る取次業
・医薬品(医薬部外品を含む)、農薬、化粧品、既製服、蓄音機用レコード、磁気音声再生機用レコード又はデジタル式の音声再生機用レコードの製造業
・医薬品(医薬部外品を含む)、農薬、化粧品、既製服、蓄音機用レコード、磁気音声再生機用レコード又はデジタル式の音声再生機用レコードの物品の卸売業

<繰入限度額>
繰入限度額は下記のいずれかにより計算することとされています。
翌期以降に生じると考えられる返品に係る商品の粗利益額を、事前に課税所得から差し引くことを目的とした繰入限度額の設定になります。

・期末売掛金残高より計算する方法
期末売掛金残高 × 返品率 × 売買利益率 = 繰入限度額

・販売金額から計算する方法
決算日以前2月間における対象事業の販売金額 × 返品率 × 売買利益率 = 繰入限度額

(※1)返品率は下記の算式により計算した割合を言います。(なお、対象事業に係る金額のみピックアップして計算します。)
    当期及び前期の返品額 / 当期及び前期の総売上

(※2)売買利益率(なお、対象事業に係る金額のみピックアップして計算します。)
    (売上高 ー 売上原価 ー 販売手数料)= 売上高

(※3)繰入限度額は、対象事業の種類ごとにより計算する。
 なお、対象事業の種類が異なる場合には、併用することができます。(例:B事業については「期末売掛金残高より計算する方法」を採用し、D事業については「販売金額から計算する方法」を採用する)

(3)改正後の返品調整引当金の取扱い

改正後は、返品調整引当金の規定が廃止されることとなります。
そのため、会計上計上している返品調整引当金は、全額損金不算入となります。
なお、平成30年4月1日以後に開始する事業年度より返品調整引当金制度は廃止されます。

(4)経過措置

返品調整引当金制度の廃止に伴い経過措置が設けられています。その経過措置の対象法人と内容については、下記をご確認ください。

<経過措置>
①対象法人
平成30年4月1日において返品調整引当金制度の対象事業を営む法人

②内容
(a) 平成33年3月31日までに開始する各事業年度 ・・・ 廃止前と同じ繰入限度額による引当てが認められる
(b) 平成33年4月1日から平成42年3月31日までの間に開始する各事業年度 ・・・ 廃止前と同じ繰入限度額に対して1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の引当てが認められる

【参考法令等】

法人税法53条
法人税法平成30年3月31日改正附則25条
法人税法施行令99条、101条

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