概要

海外の企業に支払いを行う場合、国内の会社に対して行われる支払いとは異なり、検討を行うべき論点が増えることになります。
法人税はもちろん、消費税・源泉所得税について検討を行う必要があるでしょう。
特に源泉所得税については、租税条約を確認する必要があり、これらの論点は国内の企業に対する支払いでは検討する必要がないと考えられる論点であることから馴染みがない方も多いでしょう。
今回は、特許権の使用料(ロイヤリティ)を題材に解説を行いたいと思います。

海外子会社に特許権の使用料(ロイヤリティ)を支払うこととなりました。この場合の税務上の取扱いを教えてください。この特許権の登録は海外の機関で行われています。

・法人税について
その子会社に支払う特許権の使用料(ロイヤリティ)は、法人税の計算上、損金の額に算入されます。

・消費税について
ご質問の特許権の使用は、国外取引に該当するため、課税仕入れになりません。

・源泉所得税について
非居住者に支払われる特許権の使用料(ロイヤリティ)は、源泉徴収の対象となります。
原則20.42%の税率により所得税を源泉徴収する必要があると考えられます。
なお、租税条約の内容により所得税の源泉徴収が可否が変更される可能性があります。そのため、海外子会社の所在地国と締結している租税条約を確認する必要があります。

(1)概要法人税について

①内容

海外子会社に対して支払う特許権の使用料は、その債務が確定した事業年度において損金の額に算入されると考えられます。(売上原価等に該当する場合には、収益が益金の額に算入される事業年度)

②移転価格税制との関係について

海外子会社は、国外関連者に該当すると考えられます。
(国外関連者とは、直接的あるいは間接的に50%以上の出資比率を有しているまたは特定事実が存在することにより事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係がある者をいいます。)
そのため、特許権の使用料は移転価格税制の対象となる取引になると考えられます。
移転価格税制とは、国外関連者との取引における取引価格を利益調整のために恣意的に調整することを防止するための税制になります。
ご質問の特許権の使用料が独立した第三者との間で使用される取引価格と異なる価格である場合には、移転価格税制の適用対象となると考えられます。

(2)消費税について

仕入税額控除の対象となる課税仕入れとされるためには国内取引である必要があります。
特許権の貸付が国内で行われているかどうかの判定は、特許権を登録した機関の所在地(2以上の国で登録している場合には、その貸付を行う者の住所地)で行うこととされています。
ご質問の場合ですと、海外の機関にて特許権の登録が行われていることから国外取引となります。
したがって、海外子会社に支払う特許権の使用料は課税仕入れに該当しません。

(3)源泉所得税について

①源泉徴収の可否について

海外の会社(非居住者)に対して何らかの対価を支払う際は、国内の会社(居住者)に対して支払う時より、源泉所得税を意識する必要があると考えれらます。
源泉徴収を行う対象の支払い範囲が広くなっており、このような取引があまりない会社ですと、源泉徴収を失念するケースが生じることもあるかと思われます。
海外の会社(非居住者)との取引を行う場合の源泉徴収の可否の判定は、下記のステップにて行われると考えられます。

<源泉徴収の可否判定>
STEP1:支払い内容の確認
STEP2:日本の税法に当てはめを行い、源泉徴収の必要があるか確認
STEP3:租税条約の確認を行い、源泉徴収の可否が変更されないか確認

②支払い内容の確認(STEP1)

海外の会社(非居住者)に対する支払いの内容を確認しましょう。支払い先の会社と締結している契約書の確認、担当者へのヒヤリング等を行う必要があるでしょう。

③日本の税法に当てはめを行い、源泉徴収の必要があるか確認(STEP2)

STEP1にて確認を行なった内容を日本の税法に当てはめを行い、源泉徴収の可否を判定する必要があるでしょう。具体的には、所得税法を参照することとなりますが、その支払いが所得税法に規定する国内源泉所得に該当するか否かにより、源泉徴収が必要になるかどうかを判定することとなります。

④租税条約の確認を行い、源泉徴収の可否が変更されないか確認(STEP3)

STEP2において源泉徴収の可否を判定しましたが、海外の会社(非居住者)の所在地国と締結している租税条約により源泉徴収の可否が変更される可能性があります。
そのため、日本と所在地国とが締結している租税条約を確認する必要があります。
具体的には、限度税率(源泉所得税の減免)と所得の源泉地を検討する必要があると考えられます。

(a)限度税率(源泉所得税の減免)について

海外の会社(非居住者)の所在地国と締結している租税条約において、限度税率が規定されていることがあります。
限度税率が規定されている場合の源泉徴収を行う所得税の金額を計算する際に使用する税率は、所得税法の源泉税率と租税条約の限度税率のうち、いずれか低い方の税率になります。
限度税率が規定されていない場合には、国内法である所得税法に規定する税率をして納付税額を計算することになります。

例えば、海外の会社(非居住者)対して特許権の使用料を支払う場合の源泉税率は所得税法においては20%(復興特別所得税を含めると20.42%)とされています。
日本とインドネシアが締結している租税条約を確認すると、使用料の限度税率は10%とされています。
そのため、インドネシアに所在している会社に対して特許権の使用料を支払う場合の源泉税率は10%となります。

(b)所得の源泉地について

海外の会社(非居住者)の所在地国と締結している租税条約に所得の源泉地が変更される内容の規定が含まれていることがあります。
国内法である所得税法においては「使用地主義」が採用されています。一方で、日本が外国と締結している租税条約においては「債務者主義」が採用されているケースが多いです。
「使用地主義」とは、特許権などの工業所有権等を使用する国において所得が生じる考え方を言います。
「債務者主義」とは、使用料の支払い者の所在地国において所得が生じる考え方を言います。
日本の会社から海外の会社へ支払う場合には、使用地も支払い者の所在地国も日本であることから「使用地主義」と「債務者主義」とで結論が変わることはないと考えられますが、所得の源泉地が変更することにより、源泉徴収の要否が変更することもありますので注意が必要です。

【参考法令等】

所得税法161条①十一
消費税法施行令6条五

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