当社は100%の子会社を有しております。その子会社は100%の子会社を有しており、当社から見ると孫会社になります。
この孫会社を子会社化したいと考えておりますが、その方法として「株式譲渡」「事業譲渡」「現物配当(適格現物分配)」「会社分割」が考えられると思います。それぞれの取扱いを教えていただけますでしょうか?

それぞれの取扱いを下記に記載しておりますのでご確認ください。

(1)株式譲渡の取扱いについて

子会社が有している孫会社株式を親会社に譲渡することにより子会社化する手法になります。

株式譲渡であるため、当社から子会社に孫会社株式の譲渡対価を支払う必要があります。基本的には時価で譲渡を行う必要がありますが、仮に時価と異なる金額で譲渡が行われ、税務調査において寄附金・受贈益の認定を受けたとしても、法人による完全支配関係があると考えられることから、認定を受けた寄附金・受贈益はグループ法人税制により全額損金不算入・益金不算入になると考えられます。(法人税法37条②)

なお、その孫会社株式の税務上の帳簿価額が1,000万円以上である場合は、譲渡損益調整資産に該当することから、その譲渡損益については繰り延べられることとなります。

株式譲渡については債権者保護手続きは不要です。

(2)事業譲渡の取扱いについて

事業譲渡の対象となる移転資産を孫会社株式とする事業譲渡を行うことにより子会社化する手法になります。
この場合、対価を現金に設定しなければ現金の動きはないことになりますが、一般的には現金を支払うケースが多いと思われます。

事業譲渡は基本的には時価で取引を行う必要がありますが、法人による完全支配関係があると考えられることから、仮に時価と異なる金額で譲渡が行われ、税務調査において寄附金・受贈益の認定を受けたとしてもこれらの金額はグループ法人税制により全額損金不算入・益金不算入になると考えられます。(法人税法37条②)

また、その孫会社株式の税務上の帳簿価額が1,000万円以上である場合は、譲渡損益調整資産に該当することから、その譲渡損益については繰り延べられることとなります。

なお、株式譲渡については債権者保護手続きは不要です。

(3)現物配当(適格現物分配)の取扱いについて

子会社が有している孫会社株式を当社に「現物分配」を行うことにより移転することにより子会社化する手法になります。

現物分配である場合、「会社分割」では必要な債権者保護手続きが不要であり、株式の移転は最短で1日あれば完了します。
「適格現物分配」に該当する「現物配当」は譲渡損益は生じず、孫会社株式は帳簿価額により移転することとなります。
なお、「現物分配」であることから、剰余金の配当に該当します。分配可能額が不足している場合には、配当することができないため注意が必要です。(分配可能額が足りない場合は、資本剰余金を原資とする配当を行う手法も検討するのもありだと考えられます。)

現物分配直前においてのみ完全支配関係を有していれば、「適格現物分配」に該当します。(「会社分割」の場合、実行後も完全支配関係が継続することが求められています。)
その「現物配当」が「適格現物分配」に該当する場合には、孫会社株式の移転について税務上譲渡損益は生じず、課税関係は発生しません。この場合、当社において孫会社株式は、子会社の税務上の帳簿価額により受け入れることとなります。
「適格現物分配」は「会社分割」と比較して税制適格の要件が少ないことから、この点について、税務リスクが少ないと考えられます。

なお、現物配当については債権者保護手続きは不要です。

(4)会社分割の取扱いについて

子会社が有している孫会社株式を分割の対象とする「会社分割」を行うことにより移転をすることにより子会社化する手法になります。

「会社分割」の対価は株式または無対価になると考えられます。一般的に、グループ内の「会社分割」である場合には無対価であることが多いと考えられます。
ご質問のケースですと現在子会社との間に完全支配関係があります。そのため、「適格分割」に該当するためには、「会社分割」後においても完全支配関係が継続することが見込まれている必要があります。

「会社分割」が「適格分割」に該当する場合には、孫会社株式の移転について税務上譲渡損益は生じず、課税関係は発生しません。この場合、当社において孫会社株式は、子会社の税務上の帳簿価額により受け入れることとなります。

「会社分割」は債権者保護手続きが必要となる場合があり、その場合手続きに最低でも1月以上の期間を有することになります。

(5)現金の移動が不要なケース

「現物配当」、「会社分割」については現金の移動をしなくてよいケースに該当します。
現金を移動させたくない場合には、これらの手法を採用することを検討しましょう。

(6)欠損金を有している場合について

「適格現物分配」、「適格分割」により孫会社株式を移転する場合において、欠損金を有している当社と子会社の支配関係が5年以内に生じている場合には、「繰越欠損金の使用制限」、「特定資産の譲渡等損失の損金算入制限」などのデメリットが生じる可能性があります。そのため、これらの規定の適用を受けることがないか事前に確認を行う必要があります。

(6)まとめ

孫会社株式を子会社化する手法について概要を解説しました。
選択する手法ごとによりそれぞれメリット・デメリットがあることから、実際に資産を移転すること場合は際は十分に検討を行い、どの手法で資産移転を行うのが適正であるか判断する必要があるでしょう。

【参考法令等】

法人税法2条十二号の10、2条十二号の11、37条②
法人税法施行令4条の3⑥二

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