概要
100%親子関係にある法人同士において、親法人を合併法人、子法人を被合併法人とする合併が行われるケースは少なくありません。また、100%の親子間で行われる合併は、そのほとんどが無対価で行われます。
今回は、この無対価合併の取扱いについて解説を行いたいと思います。
この場合の取扱いについて教えてください。
なお、この合併は適格合併に該当します。
適格合併に該当する場合、税務上、合併法人が受け入れる資産・負債は帳簿価額によりその移転を認識します。
また、被合併法人において譲渡損益は生じません。
詳細は取扱いは下記をご確認ください。
<解説の前提>
①当社における資産
・B社株式 500
②B社における資産・負債
・諸資産 2,000
・諸負債 300
・未払法人税 200
・賞与引当金 100
・合併直前における資本金等の額 300
(1)無対価合併の会計処理について Step1
100%親子関係にある法人間で適格合併に該当する無対価合併が行われた場合、合併法人である親法人が会計上受け入れる金額は、合併期日前日において決算を行い、その決算により付された帳簿価額になります。
合併に伴い子法人の株式は消滅することから、その親法人が有している子法人株式の消滅を認識します。この場合に使用する科目は「抱合せ株式消滅差損」、「抱合せ株式消滅差益」(特別損益)になります。
対価の交付はないことから、資本金及び資本剰余金の増加はありません。
<仕訳例>
諸資産 ×× / 諸負債 ××
子会社株式 ××
抱合せ株式消滅差益 ××
<当社の会計仕訳>
諸資産 2,000 / 諸負債 300
B社株式 500
未払法人税 200
賞与引当金 100
抱合せ株式消滅差益 900
(2)無対価合併(適格合併)の税務処理について Step2
適格合併に該当する合併を行う場合、税務上、資産・負債は被合併法人における最終事業年度終了時の帳簿価額(税務上)により移転の認識を行います。(法人税法62条の2①、法人税法施行令123条の3①)
また、会計上は「抱合せ株式消滅差損」を認識しますが、税務上はこれは認識しないことから、別表4において課税所得、別表5(1)において利益積立金額、資本金等の額を調整する必要があります。(法人税法61条の2②、法人税法施行令8条①五、9条①二)
<税務仕訳例>
諸資産 ×× / 諸負債 ××
資本金等の額 ×× / 子会社株式 ××
利益積立金額 ××
<当社の税務仕訳>
諸資産 2,000(※1) / 諸負債 300(※1)
資本金等の額 200(※3) / B社株式 500(※2)
未払法人税 100(※1)
賞与引当金 0(※1)
利益積立金額 1,300(※4)
(※1)資産・負債はB社(被合併法人)における最終事業年度終了時の帳簿価額(税務上)により移転を認識
(※2)B社株式(被合併法人株式)の税務上の帳簿価額を減額
(※3)B社(被合併法人)の合併日前日の属する事業年度終了の時における資本金等の額に相当する金額 ー B社株式(被合併法人株式)帳簿価額 ・・・ 300 ー 500 = △200(プラスの場合は資本金等の額の増加額として貸方に記載)
(※4)B社(被合併法人)の合併日の前日の属する事業年度終了の時の資産の帳簿価額(税務上) ー B社(被合併法人)の合併日の前日の属する事業年度終了の時の負債の帳簿価額(税務上)ー 増加資本金等の額(※3)ー B社株式の帳簿価額 ・・・ 2,000 ー 300 ー △200 ー500 = 1,400
(4)税務調整(別表記入)について Step3
会計処理と税務処理が異なることから、税務調整を行う必要があります。
Step1で示した会計仕訳とStep2で示した税務仕訳を比較して、税務調整仕訳を作成します。単純に、会計仕訳から税務仕訳を差し引いた金額が税務調整仕訳となります。
<当社の税務調整仕訳>
資本金等の額 200 / 利益積立金額 1,300
未払法人税 100
賞与引当金 100
抱合せ株式消滅差益 900
B社の最終事業年度における別表5(1)は下記のような状態になっていると考えられます。
これらの金額を、当社の別表5(1)に転記していくイメージとなります。
当社の合併事業年度における、合併にかかる別表の記載は下記の通りになると考えられます。
(5)まとめ
以上が、100%親子間で行われる無対価合併(適格合併)の取扱いになります。
実務で遭遇した際はご参考にしていただければと思います。
【参考法令等】
法人税法61条の2②、62条の2①
法人税法施行令8条①五、9条①二、123条の3①