Question

当社は保有している不動産を賃貸することを主な事業とする同族会社であり、取締役は親族のみで構成されている法人です。

当期において、株主でもある当社役員A氏から、A氏が保有している分譲マンション(賃貸用不動産として運用しているものである。)を当社に売却したいという打診を受けました。

A氏は個人で賃貸管理を行うことが面倒になったことから売却をしたいと考えているとのことですが、当社には一括購入できるだけの資金がなく、また経営戦略上、銀行などから借入をすることは考えておりません

同役員は取引価格は世間相場(時価)を無視した低額(安価でよいと言っていますが、税務上の問題(リスク)は生じないでしょうか?

Answer

(1)概要

時価の半額以下で取引を行った場合、下記税務上の問題(リスク)が生じる発生する可能性が極めて高いと考えられます

①売主役員A氏に、「みなし譲渡所得課税」が適用される可能性(所得税5959条

②買主の法人に、受贈益が発生する可能性(法人税22条

③株主に、贈与税が発生する可能性(相続税法達9-2

 

また、市場価格の半額以上で取引を行った場合でも、下記の規定が適用され、市場価格の半額以下で取引を行った場合と同様の問題が発生する可能性があります。

「同族会社等の行為又は計算の否認」(所得税法157条)

上記「行為計算否認」を受けた場合には、所得税の「みなし譲渡所得課税」が適用される旨の通達(所得税法基本通達59−3)

 

以上のように、世間相場(時価)以下での取引は税務リスクが生じる可能性があります

なお、今回は法人と同法人の役員間の取引とのことですので、法人の機関設計により株主総会・取締役会いずれかの承認を受け、議事録を整備する必要があります。

(2) 時価の半額以下で取引を行った場合の取扱い

【売主への課税】

譲渡所得を認識する際、時価の1/2未満の価格で売買を行った場合には「みなし譲渡所得課税」の制度が適用され、時価で売買したものとみなして譲渡所得が課税されます。(所得税法59条)

同規定が適用されると、売主は税務上重大な不利益を被り、売却価格や時価によっては売却価格以上の課税を受けることも考えられるため、時価で取引したうえで代金を分割払いにしたり、無償での贈与や現物出資とすることも検討すべきであると思われます。

 

【法人への課税】

法人税法上は、時価の1/2未満、以上を問わず、時価より低い金額で取引を行う場合には、時価と購入金額の差額は受贈益として益金計上する必要があります。

法人と無関係である第三者との取引であれば、取引価格が世間相場と乖離したとしても、通常は取引価格が時価であると捉えられるため問題にはなりません。(売り急いでいたり、どうしても取得したい不動産であるなどの事情も考慮されるため)

しかし、今回ご質問のケースでは、買主が同族企業であり、売主が同族企業の株主でもある役員とのことですので、取引価格が時価ではないか税務調査において確認される可能性が高いと考えられ、取引価格について慎重に検討する必要があると思われます。

 

【株主への課税】

同族会社に「会社に対し時価より著しく低い価格の対価で財産の譲渡をした」ことにより、同族会社の株式の価格が増加した場合には、その増加した価格が「当該財産の譲渡をした者」から同族会社の株主に対して贈与されたものとみなされます。(相続税法基本通達9−2)

通常、時価の1/2未満の価格で取引をした場合には「著しく低い価格」と認められると思われますので、同規定が適用されるものと考えられます

 

なお、同規定は下記のような状況が発生したことにより会社が資力を喪失した場合は適用されません。(相続税法基本通達9−3)

・法令に基づく会社更生

・再生計画認可の決定

・会社の整理等の法定手続による整理

・株主総会の決議や債権者集会の協議等により再建整備のために負債整理に入ったような場合

しかし、今回のご相談からはそのような事情は無いと考えられますので、原則通り同族会社の株主に課税されるものと考えられます

特に売主・同法人の役員以外の株主にとっては、自己が全く関与していない取引により突然課税されることとなりますから、大きな反発が予想されます。

 

(3) 時価の半額以上で取引を行った場合の取扱い

時価の1/2以上で取引を行ったとしても、ご相談の会社が同族会社であることから「同族会社等の行為又は計算の否認」、通称「行為計算否認」規定が適用される可能性があります。

同族会社の場合、通常の法人では想定しにくい取引が行われるケースがあります。

ご相談のケースも、売主は同族会社だからこそ低廉な価格で取引することを提案してり、全く無関係の法人に同様の提案をすることは考えにくいでしょう。

行為計算否認とは、このようなケースのうち、法人税の負担を不当に減少させる結果になると認められるものについては、そのような取引に関わらず、課税庁が適正であると考える取引があったと認定され(または、その取引がなかったものと認定され)、法人税が計算される規定になります

ご質問のケースで行為計算否認が行われると、買主の法人税の計算上は時価で取引が行われたものとみなされると考えられます。

また、法人税法において行為計算否認が行われた場合には、売主の譲渡所得を計算する際にも行為計算否認後の価格を用いることとされています。(所得税法基本通達59−3)

したがって、売主にも時価で売買したものとみなして譲渡所得が課税されることとなります。

 

行為計算否認が行われた場合の株主への影響については、個別規定がありません。

あくまで「著しく低い価格」で取引が行われたかどうかを基に課税の可否が判断されるものと考えられます

 

【参考法令等】

法人税法22条

所得税法59条

所得税法157条

所得税法基本通達59−3

相続税法基本通達9ー2

相続税法基本通達9−3

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加