概要
法人が役員に対して支給する給与(報酬)は、一定の要件を満たしていなければ損金の額には算入されません。
損金の額に算入される役員給与に業績連動給与というものがあり、今回は、この業績連動給与についての解説を行います。
Question
損金に算入される役員給与に業績連動給与があるとのことですが、その業績連動給与とはどのような給与をいうのですが。
Answer
(1)概要
業績連動給与とは、非同族会社(または、同族会社のうち、同族会社以外の法人との間に完全支配関係がある法人)が業務執行役員に支給する給与のうち、利益に関する指標を基礎算定される給与をいいます。
業績連動給与のうち、一定の損金算入要件を満たす場合には、損金の額に算入されることとなります。
ただし、他の業務執行役員全てに対して、業績連動給与を支給する場合のみ、損金の額に算入されることとなります。
(2)業績連動給与とは
業績連動給与とは、下記の①または②のいずれかに該当するものをいいます。
ただし、金銭以外の資産が交付される場合には、適格株式又は適格新株予約権が交付されるものに限ることとされています。
①その内国法人または内国法人との間に完全支配関係がある法人の利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他業績を示す指標を基礎として支給される金額または交付される数が算定される下記に掲げる給与
(イ)金銭
(ロ)株式
(ハ)新株予約権
②無償で取得され、または消滅する株式または新株予約権の数が役務提供期間以外の事由により変動する下記に掲げる給与
(イ)特定譲渡制限付株式(承継譲渡制限付株式を含む)
(ロ)特定新株予約権(承継新株予約権を含む)
(3)損金算入要件
内国法人が支給する業績連動給与のうち、下記の要件を全て満たすものについては、損金の額に算入されます。
①業績連動給与を支給する内国法人が同族会社に該当しないこと
ただし、同族会社である場合でも、非同族会社と完全支配関係がある場合にはこの要件を満たすこととされてます。
②交付される「金銭の額」・「株式または新株予約権の数」、無償取得等される「新株予約権の数」の算定方法が、その給与に係る職務執行期間開始の日以後に終了する事業年度の利益の状況を示す指標等(例:当期純利益、営業利益、ROA、ROE,、EBITDA等)を基礎とした客観的なもので、下記の要件を満たすものであること
(イ)支給する給与は、確定した額・確定した数を限度としているものとしていること
(ロ)他の業務執行役員に対して支給する業績連動給与に係る算定方法と同様のものであること
(ハ)職務執行開始日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日(延長承認を受けている場合には、その承認を受けている月数に2を加えた月数を経過する日)までに、報酬委員会(業績執行役員その他一定の役員が委員となっているものを除く)が決定していることその他一定の手続きを経ていること
(ニ)その内容が、(ハ)で定める適正な手続き終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書等に記載を行い開示をしていること
③ 下記の期限までに支給、または支給されることが見込まれていること
(イ)金銭による給与 → 指標の数値がの確定した日の翌日から1月を経過する日
(ロ)株式または新株予約権による給与 → 指標の数値がの確定した日の翌日から2月を経過する日
(ハ)特定新株予約権(承継新株予約権を含む)で、無償取得等されるものについては、報酬委員会等における適正な手続きが終了した日の翌日から1月を経過する日
④ 損金経理をしていること(損金経理により繰り入れた引当金勘定の取り崩しによる方法を含む)
(4)用語の意義
①業務執行役員
業務執行役員とは、業務を執行する役員として、下記のような役員をいいます。
(イ)取締役会設置会社の代表取締役及び代表取締役以外の取締役であって取締役会の決議によって業務を執行する取締役として選任された者
(ロ)指名委員会等設置会社における執行役
(ハ)(イ)及び(ロ)に該当しない役員で、実質的に業務の執行を行なっている役員
そのため、取締役会設置会社における代表取締役以外の取締役のうち業務を執行する取締役として選定されていない者、社外取締役、監査役及び会計参与は、業務執行役員に該当しないとされています。
②適格株式
適格株式とは、株式を交付する法人又はその法人の関係法人が発行した株式で、その株式が市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式である場合の株式をいいます。
③適格新株予約権
適格新株予約権とは、新株予約権を交付する法人又はその法人の関係法人が発行した新株予約権で、その新株予約権の行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権をいいます。
④関係法人
関係法人とは、その給与に係る株主総会等の決議日において、その日から特定譲渡制限付株式の譲渡制限が解除される日までの間、その内国法人と他の法人との間にその他の法人による支配関係が継続することが見込まれている場合のその他の法人をいいます。
【参考法令等】
法人税法34条①三
法人税法69条
法人税法基本通達9−2−17