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概要

平成33年4月1日以後に開始する事業年度より、収益の認識基準が大きく変わることが決定しました。
この変更により、営んでいる事業の内容によっては会計処理の手間が大きく増大する可能性があります。
かなり難解な内容となっているため、直前になってから慌てて対応したのでは間に合わない可能性があり、今のうちから準備をしておく必要があるでしょう。
今回は改正後の収益の認識基準について解説をしたいと思います。

平成33年度から収益の認識方法が変更されるという話を聞きましたが、この認識方法の変更について教えてください。

収益の認識方法が、これまでの実現主義による方法から「収益認識に関する会計基準」による方法へと変更されることとなります。

(1)総論

収益の認識方法が、これまでの実現主義による方法から「収益認識に関する会計基準」による方法へと変更されることとなります。
「収益認識に関する会計基準」は、平成30年3月30日に企業会計基準委員会から公表され、原則として平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされました。
したがって、3月末決算の法人の場合には、平成33年度から売上の認識基準が変更されます。

(2)影響が大きい業態

「収益認識に関する会計基準」が適用されることにより、多かれ少なかれすべての企業に影響があります。「収益認識に関する会計基準」の詳しい特徴については次回以降に解説しますが、大きく以下のような流れで収益を認識することとなります。

<収益の認識方法>

①「ある契約にどのような義務が含まれているのか、識別する」

②「その契約の取引価格を算定する」

③「①で識別した義務に、②で算定した取引価格を配分する」

④「①で識別した義務を果たすごとに、③で配分した収益を認識する」

また、現在は発生時に販管費で処理している値引きや返品、キャッシュバックなどに係る費用について、「収益認識に関する会計基準」では収益計上時に売上の減額として処理するものとされました。

したがって、特に下記のような特徴を持つ企業については影響が大きいでしょう。

・複数の財またはサービスの提供を一つの契約として販売している企業
例えば、3年間の保守サポート付きのPCやOA機器を販売している企業などが該当します。
なぜ影響が大きいと考えられるかと言いますと、③「取引価格の配分」が困難であると予想されるからです。

・お客様との契約内容が頻繁に変更される企業
例えば、仕様変更を伴うシステム開発を請け負うIT企業や、建設業などが該当します。
なぜ影響が大きいと考えられるかと言いますと、①「義務の識別」により識別された義務と②「取引価格の算定」により算定された取引価格が頻繁に変更されるうえに、契約変更により③「取引価格の配分」が頻繁に変わるためです。

・値引き、返品、リベートなどを求められる企業
例えば、建設業や家電量販店などが該当します。
なぜ影響が大きいと考えられると言いますと、②「取引価格の算定」により算定された取引価格が頻繁に変更される上に、その金額の見積もりが困難だと予想されるためです。

・ポイントカードやキャッシュバックキャンペーンを頻繁に行う企業
例えば、家電量販店やドラッグストア、スーパーマーケットなどが該当します。
なぜ影響が大きいかと言いますと、②「取引価格の算定」により取引価格を算定する際、各取引ごとにお客様に提供したポイントやキャッシュバック額を減額した額を売上として計上しなければならないためです。

(3)企業活動への影響

「収益認識に関する会計基準」が適用されることにより、会計処理や財務諸表だけでなく、企業活動そのものにも影響を与えることとなります。
例えば、「収益認識に関する会計基準」では、売上高の額を、取引当事者の立場(本人)で得たものか、それとも取引の当事者をサポートする立場(代理人)で得たものかを区別して認識し、本人の立場で得た収益については収益と費用を個別に計上しますが、代理人の立場で得た収益については収益から費用を差し引いた純額を「売上高」として計上することとされました。どちらの立場であっても最終的な利益は同じですが、「代理人」の立場で収益を得るタイプの事業を営む企業の場合、「収益認識に関する会計基準」適用後は売上高が激減することとなります。
この影響を大きく受ける事業の代表例は、百貨店やスーパーです。なぜなら、現在百貨店やスーパーは、商品の所有権を卸売業者やメーカーに残したまま陳列し、販売と同時に所有権が「卸売業者やメーカー→百貨店やスーパー→顧客」と移転するという方法で事業を行っているケースが多いからです。また、それに伴って、経理面では販売と同時に売上・仕入を同時に計上するという処理を行っています。
このような販売方法は、「収益認識に関する会計基準」では代理人の立場で収益を得たものと考えられ、売上から仕入を差し引いた純額を売上として計上することとなります。

(4)まとめ

新しい収益認識基準は内容が複雑で、一見わかりにくいため、現時点では対応を先送りにしている企業が多いようです。
しかし、本基準が適用されることによる影響は、会計帳簿や財務諸表に留まらず、顧客との契約内容や契約書、業務プロセス、ITシステムなど、あらゆる企業活動に波及する可能性があります。本会計基準が自社に与える影響について、早い段階から検討する必要があります。

【参考法令等】

企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」
企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」

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