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Question

当社は、当社の役員に下記の前提条件のもと「特定譲渡制限付株式」を交付することを予定しております。
この場合の、会計上の処理と税務上の処理を教えてください。

・前提条件
①役員から報酬債権6,000万円の現物出資を受けて、特定譲渡制限付株式500株を発行(付与)します。
②特定譲渡制限付株式付与から譲渡制限解除までの期間は3年間になります。
③譲渡制限の解除条件は、譲渡制限期間中、役員として継続し勤務することとします。
なお、役員がその譲渡制限期間が満了するする以前に当社の役員を正当な理由なく退任した場合には、その時点においてその特定譲渡制限付株式のうち在任期間に対応する数の株式についてはその譲渡制限を解除するものとして、それ以外の株式については当社が無償で取得することとします。
④特定譲渡制限付株式の交付は新株発行により行うものとしています。

Answer

(1)特定譲渡制限付株式の交付が行われた場合の処理方法について

法人がその役員又は従業員等(以下「役員等」という)に報酬債権を付与し、その役員等からその報酬債権の現物出資と引き換えにその役員等に特定譲渡制限付株式を交付した場合には、その特定譲渡制限付株式の発行方法により処理が異なると考えられます。
新株の発行により特定譲渡制限付株式の交付が行われた場合の会計上の処理と税務上の処理はそれぞれ下記の通りになると考えられます。

①会計上の処理について

・交付時の処理
新株の発行により特定譲渡制限付株式の交付時の会計上の処理は、付与した報酬債権相当額を「前払費用等の適当な科目(以下「前払費用等」という)に資産計上を行い、現物出資を受けた報酬債権の額を会社法等の規定に基づき「資本金及び資本市偏金(以下「資本金等」という)に計上を行うこと処理が考えられます。
・交付後の処理
特定譲渡制限付株式の交付後の会計上の処理は、現物出資を受けた報酬債権の相当額のうち、その役員等が提供する役務として当期において発生したと認められる額を、対象勤務期間(譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法により、前払費用等の取り崩しを行うことにより費用計上していくことが考えられます。

②税務上の処理

内国法人からその役員等から役務の提供を受ける場合において、その役務の提供に係る費用の額についてその対価としてその法人又は関係法人の特定譲渡制限付株式が新株発行により交付された場合には、その個人の給与等課税事由が生じた日においてその役務の提供を受けたものとして、法人税法の規定を適用するとされています。
そのため、給与等課税事由が生じた日である特定譲渡制限付株式の譲渡について制限が解除された日において役務の提供を受けたものとして、その役員に付与した特定譲渡制限付株式が事前確定届出給与に該当するのであれば、同日の属する事業年度において損金の額に算入されることとなります(事前確定届出給与の届出が必要な場合には、提出している場合のみ損金の額に算入されます。)。
この場合の損金の額に算入される「その役務の提供に係る費用の額」とは、その特定譲渡制限付株式の交付が正常な取引条件で行われた場合には、その特定譲渡制限付株式の交付につき給付され、又は消滅した債権(その役務提供の対価としてその個人に生ずる債権に限られます。)の額に相当する金額とされます。
なお、現物出資を受けた報酬債権の額が資本金等の額の増加額になると考えられます。

③用語の意義

(イ)関係法人
関係法人とは、その給与に係る株主総会等の決議日において、その日から特定譲渡制限付株式の譲渡制限が解除される日までの間、その内国法人と他の法人との間にその他の法人による支配関係が継続することが見込まれている場合のその他の法人をいいます。

(ロ)給与等課税事由
給与等課税事由とは、所得税法等の規定により、その役員等の給与所得、事業所得、退職所得及び雑所得の所得に係る収入金額等に算入されることをいいます。

(2)具体的な処理について

ご質問の事例の具体的な処理は、下記の通りになると考えられます。

①特定譲渡制限付株式の付与時の処理

・会計処理
前払費用 6,000万円 / 報酬債務 6,000万円
報酬債務 6,000万円 / 資本金等 6,000万円

・税務上の処理
前払費用 6,000万円 / 報酬債務   6,000万円
報酬債務 6,000万円 / 資本金等の額 6,000万円

・税務調整仕訳
税務処理と会計処理が一致しているため税務調整なし。

② 役務提供時(1年目)の処理

・会計処理
役員報酬 2,000万円 / 前払費用 2,000万円

・税務上の処理
税務仕訳なし

・税務調整仕訳
前払費用 2,000万円 / 役員報酬 2,000万円
※給与等課税事由が生じた時等に解消するものであることから、留保項目により加算調整を行うべきと考えられます。

③役務提供時(2年目)の処理

・会計処理
役員報酬 2,000万円 / 前払費用 2,000万円

・税務上の処理
税務仕訳なし

・税務調整仕訳
前払費用 2,000万円 / 役員報酬 2,000万円
※給与等課税事由が生じた時等に解消するものであることから、留保項目により加算調整を行うべきと考えられます。

④ 役務提供時(3年目、譲渡制限解除時)の処理

・会計処理
役員報酬2,000万円 / 前払費用 2,000万円

・税務上の処理
役員報酬6,000万円 / 前払費用 6,000万円
※事前確定届出給与に該当し届出が必要な場合にはその届出を行なっていること及び給与等課税事由が生じていることを前提としております。
この前提でない場合には、全額損金不算入となると考えられます。

・税務調整仕訳
役員報酬4,000万円 /前払費用 4,000万円
※前期以前に留保項目により加算調整を行ったものに対応する解消であることから、留保項目により減算調整を行うべきと考えられます。

【参考法令等】

法人税法34条①二、54条
法人税法施行令111条の2

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