(1)勘定科目ごとの留意・注意点の概要
決算における処理は、その会社の利益額を決定するものになります。
誤った決算処理を行なってしまえば、決算書の数字を元に計算が行われる申告数値も誤ってくることとなります。
勘定科目ごとにそれぞれ特有の留意・注意すべき点があるので、それぞれ解説を行なっていきたいと思います。
今回は現金預金勘定について解説を行なっていきます。
(2)現金預金勘定について
現金預金勘定は、会社が保有する現金や預金に関する取引を記帳する勘定になります。
①現金について
期末における現金の残高は、基本的には、期末時に手元にある現金の額(以下「現金有高」という。)と一致します。(小切手等を保有していたりする場合などは、これらの金額を加味した金額が残高となります。)
そのため、期末のタイミングで現金有高を出して、日々記帳を行なっている現金出納帳などの帳簿の残高と一致しているか確認を行う必要があります。(本来であれば、毎日現金実査を行い有高を確認して、現金出納帳残高を毎日照合して確認を行うべきでしょう。また、現金金種表も合わせて作成するのが望ましいでしょう。
帳簿の残高と現金有高が一致しないからといって、絶対に現金を入れたり出したりしないようにしてください。これは不正になります。
帳簿の残高と現金有高が一致しない場合には、現金過不足として認識を行い、その原因を追求しても期末までその不一致が解消しない場合には、「雑収入」又は「雑損失」として処理を行うことになります。
下記の様な要因により現金勘定が期中又は期末においてマイナスとなることがありますが、もしマイナスが生じている場合、解消させる必要があると考えられます。(現金のマイナスは基本的にはありえないため)
・経費を二重計上している場合
現金で支出した経費を二重計上している場合、帳簿上は実際に支払った金額の2倍の現金が減少しているように記帳されていることとなります。もちろん、これは費用を過大に計上しているということにもなりますから、税務申告上において過少申告となるため、税務調査において指摘を受けると追徴課税を支払う必要が出てきます。マイナスが生じていなかったとしても、2重計上されている費用がないかどうかの確認は必ず行いましょう。(例:同日、同額、同じ内容の費用が計上されている場合は、二重計上されているものでないかどうか確認を行う必要があるでしょう。)
・社長からの借り入れ
社長が個人の財布から会社の経費を支払った場合において、出費の処理のみ行い入金の処理を行なっていない時は、現金勘定がマイナスになる可能性があります。(必ずしも現金勘定がマイナスにはなりませんが、個人が会社の経費を支払った場合には、必ず入金(借入)処理を行う様にしましょう。)
また、これらとは逆に経費の支払いをするために預金を引き出し、領収書等を紛失したり、単に経費の計上をすることを失念した場合、現金勘定が過大となることがあります。現金勘定の金額がありえない様な金額になっている場合、銀行から粉飾決算をしているのではないかと疑われる可能性があります。
ちなみに、クレジットカード、経費精算等を活用することにより会社において現金保有しないようにすれば、これらの管理も特に行う必要がなくなるため、業務の効率等が上がると考えられますので、ぜひ検討していただければと思います。
②預金について
預金の額は銀行残高と一致します。(小切手等を振り出したりしていたりする場合などは、これらの金額を加味した金額が残高となります。)
預金については、通帳残高又は銀行が発行する残高証明書の数字と預金勘定の残高と一致しているかどうかを確認する必要があります。
これらの金額が異なる場合、記帳している金額に誤りがある可能性が非常に高いことから、記帳内容について再度確認を行う必要があるでしょう。
期中における帳簿の動きは、基本的には通帳等の推移と同じになります。
ただし、当座預金については、小切手を振り出した場合、その振り出したタイミングで当座預金の減少を認識することから、銀行残高と帳簿残高が異なることになります。(小切手を振り出したタイミングでは銀行残高は減少しないため、この様な現象が起きます。)
当座預金を有する場合には、銀行残高調整表を作成して帳簿残高が適正であるかどうかの検証を行う必要があるでしょう。未取付小切手がある場合、その未取付小切手が長期に渡って未取り付けになっている場合には、その理由を確認するとともに、収益として処理すべきものでないか検討を行う必要があるでしょう。
また、社長等の個人名義の口座が、会社の取引に使用されていないか確認を行う必要があります。個人名義口座に売上が入金されていないか、個人名義口座から経費の支出が行われていないか確認を行う必要があるでしょう。
(3)まとめ
今回は現金預金勘定について解説を行いました。
今後も引き続き各勘定科目別に解説を行なっていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。