(1)はじめに
平成30年3月期(2018年3月)の決算・申告作業もそろそろ始まってきているのではないでしょうか。
平成30年3月期において税制改正で影響がある点、決算・申告作業において注意すべき点などを解説したいと思います。
今回は平成30年3月期の決算における、留意・注意点等を解説したいと思います。
なお、基本的に青色申告法人を前提とした解説になります。
(2)決算における留意・注意点
①概要
決算における処理は、その会社の利益額を決定するものになります。
誤った決算処理を行なってしまえば、決算書の数字を元に計算が行われる申告数値も誤ってくることとなります。
そのため、誤った決算処理を行わないよう注意する必要があります。
今回は決算処理の誤りやすい事例や不正事例などの解説を行いたいと思います。
②減価償却資産について
・事業供用前の資産・稼働休止資産について
期末直前に購入した固定資産(減価償却資産)について、期末時点において事業の用に供していないにも関わらず、減価償却費を計上してはいないでしょうか。
減価償却費は事業の用に供している減価償却資産について計上していくものになります。
なお、稼働を休止している資産については、その休止期間中必要な維持補修が行われていて、かつ、いつでも稼働し得る状態である場合には、減価償却費を計上することができます。(これに該当しない稼働休止資産については、減価償却費を計上することはできません。)(法人税法基本通達7−1−13)
・付随費用について
機械装置、器具備品等を購入した際に、据付費用等を支出した場合、その支出した金額は当期の費用ではなく、減価償却資産の取得価額に含めるべきものになります。
ただし、下記に記載している費用については、取得価額に含めなくて良いとされています。(法人税法基本通達7−3−3の2)
(イ)次に掲げるような租税公課等の額
(a)不動産取得税又は自動車取得税
(b)特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
(c)新増設に係る事業所税
(d)登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(ロ)建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
(ハ)一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額
・減価償却費の計上について
重要性の観点から、期中においては減価償却費について1円単位まで入力を行わず、概算金額のみ計上しているケースもあるでしょう。
このような場合、決算時において適正な減価償却費に修正する必要があります。
③未収入金・未払金について
当期において計上すべき未収入金・未払金は計上されていますでしょうか?
また、前期において計上した未収入金・未払金の取り崩しは適正に行われていますでしょうか?
これらの勘定科目は、重要性が低いことから、期中は現金主義により帳簿を記帳しており、期末において未収・未払計上されている会社も多いのではないでしょうか。
そのような場合、期末において未収・未払計上を行い、前期計上した未収入金・未払金について取り崩しを行わなければ、適正な利益額にならないため、留意する必要があると考えられます。
④外注費について
建設業などの業種で外注費を使用されている会社があると思います。
その外注費のうち、期末において工事等が完了していない、引渡しが完了していないことから売上を計上していないものに対応する外注費はないでしょうか。
このようなものは、当期の原価として計上することができず、資産として計上を行うべきものになります。その後、売上を計上したタイミングで原価として計上すべきものになりますので、このような外注費が原価として費用計上されていないかどうか確認を行いましょう。