(1)勘定科目ごとの留意・注意点の概要

決算における処理は、その会社の利益額を決定するものになります。

誤った決算処理を行なってしまえば、決算書の数字を元に計算が行われる申告数値も誤ってくることとなります。

勘定科目ごとにそれぞれ特有の留意・注意すべき点があるので、それぞれ解説を行なっていきたいと思います。

今回は棚卸資産勘定について解説を行なっていきます。

(2)棚卸資産勘定について

①概要

棚卸資産とは、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、消耗品で貯蔵中のもの、副産物、作業くず、半成工事その他の資産で棚卸しをすべきものをいいます。(有価証券及び短期売買商品を除く。)(法人税法2条①二十、法人税法施行令10条)

期末における棚卸資産の金額(残高)は、選択している評価方法により異なることとなります。

また、預金などとは異なり、会社内部で計算した結果に基づき期末残高額が確定することから、請求書・領収書の改ざんをせずに粉飾等を行うことができるため、粉飾の事例としてよく使用されることがあります。そのため、税務調査においてはほとんどのケースが確認され、銀行などの金融機関から融資を受ける際には確認される確率が高い勘定科目となっております。

損益計算書などに表示される売上原価等の金額は、基本的には下記の図ように間接的に計算されることから、期末棚卸資産の金額は重要なものになります。

②取得価額について

棚卸資産の取得価額は購入代価に付随費用を加えた金額とされます。ここでいう付随費用とは、引取運賃、荷造費、運送保険料、購入手数料、関税等の費用が該当します。(法人税法基本通達5-1-1)

ただし、これら費用の額が棚卸資産の購入代価のおおむね3%以内の金額である場合には、取得価額に含めず、と費用計上することが認められています。

棚卸資産の取得価額として計上すべき付随費用が費用計上されている場合において、税務調査においてその事実が発覚したときは、指摘を受けることとなりますので、計上漏れがないようにご注意ください。

③貯蔵品について

貯蔵品とは、消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品などをいい、具体的には文房具、ダンボール、切手、収入印紙、封筒などになります。

原則的には、使用したタイミングで費用計上すべきものになりますが、これらを管理することは実務的には不可能に近いものがあります。

そのため、毎期おおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費する消耗品については、購入時に費用計上することが認められています。(法人税法基本通達2−2−15)

切手や収入印紙等については、このような取り扱いはなく、期末に保有している未使用分の切手・収入印紙等の棚卸しを行い、貯蔵品として資産計上する必要があります。上記消耗品などの取扱いと混同をし勘違いをしているケースも見受けられるので、ご注意ください。

また、貯蔵品の計上漏れでよく税務調査の場面において指摘を受けるケースとして、会社パンフレットの製作費があります。ただし、毎期おおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費している場合には、貯蔵品として計上しなくても良いと考えられます、

④製造業等を営んでいる場合の注意点

製造業を営んでいる場合、棚卸資産として計上すべきものは、製品だけではなく、材料費、未成工事支出金、副産物、仕損じ品、作業くず、半製品、仕掛品があります。

これらについて、棚卸資産として計上しない場合、費用が過大になってしまうことから、法人税などの所得金額により計算される税金について、過少申告となってしまいます。

そのため、計上していないことが税務調査において発覚した場合、指摘を受けることとなりますので、棚卸資産の計上漏れがないように注意する必要があります。

材料費だけでなく、人件費や外注費に係る金額についても経常漏れがないように注意するようにしてください。

⑤棚卸資産の評価方法について

・評価方法について

棚卸資産の評価方法は、下記のいずれか選択した方法(選択していない場合には、最終仕入原価法による原価法)により評価した金額をもって、期末棚卸資産の金額(残高)とされます。(法人税法施行令28条)

なお、いずれの方法も低価法を採用することができ、下記のいずれか選択した評価方法により評価した取得価額とその事業年度終了の時における価額とのうちいずれか低い価額が、期末棚卸資産の金額(残高)となります。

評価方法 詳細
原価法

期末棚卸資産の全部について、その個々の取得価額をその取得価額とする方法をいいます。

なお、棚卸資産のうち通常一の取引によつて大量に取得され、かつ、規格に応じて価額が定められているものについては個別法を採用することができないとされています。

この評価方法を採用する会社は限られており、自動車販売業、宝石業など、ひとつひとつの商品の単価が大きく、棚卸資産について個別管理を業種が採用する評価方法になります。

先入先出法 期末棚卸資産をその種類、品質及び型の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当該期末棚卸資産を当該事業年度終了の時から最も近い時において取得をした種類等を同じくする棚卸資産から順次成るものとみなし、そのみなされた棚卸資産の取得価額をその取得価額とする方法をいいます。
総平均法 棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当該事業年度開始の時において有していた種類等を同じくする棚卸資産の取得価額の総額と当該事業年度において取得をした種類等を同じくする棚卸資産の取得価額の総額との合計額をこれらの棚卸資産の総数量で除して計算した価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。
移動平均法 棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、再び同じ種類等の棚卸資産を取得する都度、加重平均単価の計算を行う方法をいいます。
最終仕入原価法 棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当該事業年度終了の時から最も近い時において取得をしたものの一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいいます。
売価還元法  棚卸資産をその種類等又は通常の差益の率の異なるごとに区別し、その種類等又は通常の差益の率の同じものについて、当該事業年度終了の時における種類等又は通常の差益の率を同じくする棚卸資産の通常の販売価額の総額に原価の率を乗じて計算した金額をその取得価額とする方法をいいます。

・届出について

棚卸資産の評価方法は、届出を行わなかった場合、最終仕入原価法による原価法により評価することとなります。

最終仕入原価法による原価法以外の評価方法を選定する場合には、原則確定申告書の提出期限までに、納税地の所轄税務署長に届出を行う必要があります。

届出書は、下記URLよりダウンロードできます。https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/tt067.pdf

なお、会計上の棚卸資産の評価方法と税務上選定している棚卸資産の評価方法が異なる場合、これらの差額について別表調整を行う必要が生じますのでご注意ください。調整を行なっていない場合において、税務調査においてその事実が発覚したときは、指摘を受けることとなります。

(3)まとめ

以上、棚卸資産勘定の取扱い・注意点等を解説しました。

棚卸資産については、税務調査の場面において計上漏れが指摘されることが多々あります。

特に、目に見えないもの(人件費・外注費)についても、棚卸資産として計上する必要があることから、これらについても計上漏れがないように注意して行きましょう。

 

 

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