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(1)勘定科目ごとの留意・注意点の概要

決算における処理は、その会社の利益額を決定するものになります。

誤った決算処理を行なってしまえば、決算書の数字を元に計算が行われる申告数値も誤ってくることとなります。

勘定科目ごとにそれぞれ特有の留意・注意すべき点があるので、それぞれ解説を行なっていきたいと思います。

今回は減価償却資産について解説を行なっていきます。

(2)減価償却資産について

①概要

減価償却資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却すべきものとして一定のものをいいます。(法人税法2条二十三)

この定義に当てはまるものでも、事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないもの(美術品、貴金属の素材の価額が大部分を占める固定資産等)は、減価償却資産に該当しないとされています。(法人税法施行令13条)

今回は、この減価償却資産について解説を行いたいと思います。

②減価償却資産の管理について

減価償却資産の管理は、通常固定資産台帳により行われているでしょう。(税理士事務所・会計事務所が固定資産台帳を管理しており、期末にその内容の確認を行うケースもあるかと思われます。)

実際に決算を行う際は、その減価償却資産の実査を行い、固定資産台帳と現物が一致しているかどうかの確認を行う必要があります。これらが一致していないことが税務調査において発覚した場合には、架空の固定資産を計上していると疑われて、購入資金の支出が架空の支出でないか等の確認が行われることとなり、その対応は会社にとって非常に負担となりますので注意が必要です。

また、固定資産台帳の金額が帳簿残高の金額と一致することとなりますので、これらの整合性は必ず確認する必要があります。

③固定資産台帳について

固定資産台帳は、減価償却資産の管理を行うことを目的として作成される台帳になります。

また、この固定資産台帳を元に、会計処理・税務処理を行うこととなるため、重要なものになります。

固定資産台帳の主な記載項目は下記の通りです。

<記載項目>

・資産の名称

・資産の区分

・取得年月日

・取得価額

・耐用年数

・償却額

・償却率

・償却方法

・帳簿価格

④会計上と税務上で異なる耐用年数・償却方法を採用している

会計上と税務上で異なる耐用年数・償却方法を採用している場合、法人税の計算上、税務調整が必要となります。会計で採用している耐用年数・償却方法が税務上の処理と一致しているか確認を行い、一致していない場合には、適正に処理を行うように注意しましょう。

⑤減価償却資産の計上漏れについて

減価償却資産の定義に該当したとしても、「使用可能期間が1年未満のもの」「取得価額が10万円未満のもの」「取得価額が30万円未満のもの(ただし、中小企業者に該当し、かつ、取得価額の合計額が300万円までの範囲内に限る)」のいずれかに該当する場合は、一時の費用として計上することができます。

もちろん、これらに該当しない場合には、減価償却資産として資産計上を行う必要があるので、消耗品費等として費用計上しないように注意する必要があります。

⑥事業の用に供していないものについて

事業の用に供していないものは減価償却資産に該当しないこととされております。そのため、このような資産については、減価償却費を計上することはできません。

例えば、当期において機械装置を取得したが、期末まで稼働させず、実際に稼働させたのは翌期である場合は、当期は減価償却費を計上することはできません。

また、以前は稼働させていた減価償却資産について、稼働させていない場合も同様に減価償却費を計上することができないこととされております。ただし、休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、減価償却費を計上することができるとされています。(法人税法基本通達7-1-3)

 

資産除去債務について

資産を取得した際、その資産の除却に関して法令または契約で要求される法律上の義務にかかる費用の見積もりとして資産除去債務を会計上は計上することを要求されています。(原状回復費等)

この資産除去債務は、その発生する費用の合理的な見積額を現在価値に割り引き、その割り引き後金額を資産の取得時に負債として計上し、同額をその資産の取得価額として計上します。

その後、資産として計上した取得価額については減価償却費として費用計上、すると同時に、負債に係る利息費用を計上する必要があります。

処理の例を下記に記載しておりますので、ご確認ください。

・処理例    

<資産取得時>

減価償却資産 3,000,000 現金預金   2,800,000
   資産除去債務   200,000

 <期末時>

減価償却費 300,000 減価償却資産 300,000
利息費用   2,000 資産除去債務  2,000

資産除去債務は、見積金額を計上しているものであることから、税務上は、債務が確定していないと判断を行い、負債計上した資産除去債務、資産計上した減価償却資産、これらに関して計上した利息費用及び減価償却費などの費用については、税務上否認を行う必要があります。

⑧購入資金について

減価償却資産は、その性質上、支出金額が多額になるケースが多いと考えられます。(中小企業者に該当する場合には、30万円未満のものは、取得価額の合計額が300万円までは一時の損金とできるため。)

そのため、税務調査等の場面において、購入資金の源泉を確認されることも想定されます。これは、購入金額が多額になるほど、この確認を受ける確率は高くなるでしょう。

⑨付随費用について

減価償却の取得価額は購入代価に取得に要した付随費用を加えた金額とされます。ここでいう付随費用とは、引取運賃、荷造費、運送保険料、購入手数料、関税、未経過固定資産税等の費用が該当します。

ただし、下記に記載しているような費用については、取得価額に含める必要はありません。

(イ)次のような租税公課等

・不動産取得税又は自動車取得税

・新増設に係る事業所税

・登録免許税その他登記又は登録のために要する費用

(ロ)建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用

(ハ)いったん結んだ減価償却資産の取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することにした場合に支出する違約金

(ニ)減価償却資産を取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)

(注)使用を開始した後の期間に係る借入金の利子は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。

(ホ)割賦販売契約などによって購入した減価償却資産の取得価額のうち、契約において購入代価と割賦期間分の利息や売手側の代金回収のための費用等が明らかに区分されている場合のその利息や費用

減価償却資産の取得価額として計上すべき付随費用が費用計上されている場合において、税務調査においてその事実が発覚したときは、指摘を受けることとなりますので、計上漏れがないようにご注意ください。

(3)まとめ

減価償却資産について解説を行いました。

減価償却資産は、その性質上多額になることから、その処理についても慎重に行う必要があるでしょう。

今回は解説を行なっていませんが、減価償却資産の取得に関しては、圧縮記帳特別償却、特別控除などの優遇措置も多数存在することから、これらの適用を受けることができないか確認を行う必要があるでしょう。

 

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