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(1)はじめに

平成30年3月期(2018年3月)の決算・申告作業もそろそろ始まってきているのではないでしょうか。

平成30年3月期において税制改正で影響がある点、決算・申告作業において留意・注意すべき点などを解説したいと思います。

今回は平成30年3月期の申告において影響がある税制改正について解説を行いたいと思います。

なお、基本的に青色申告法人を前提とした解説になります。

(2)平成30年3月期の申告に影響がある税制改正について

①研究開発税制の見直しについて

(イ)概要

国は研究開発に係る投資を増加させていたいと考えており、そのための施策として研究開発税制の見直しを行われました。

この改正の内容は、平成29年4月1日以後に開始する事業年度より適用されます。

(ロ)総額型の税額控除額の改正

改正前の総額型の税額控除率は、その会社が研究開発に投資を行なった一定の割合を単純に減税することとされていました。

この方法から、試験研究費の増減に応じて税額控除の金額が決定する方法に改正されることとなりました。

なお、この改正に伴い、増加型は廃止されることとされています。

  大法人

中小企業者等

税額控除率 試験研究費の増減に応じて6〜14% 試験研究費の増減に応じて12〜17%
控除限度額

法人税額の25%相当額

試験研究費割合が10%超の場合、

法人税額の25%相当額

高水準型との選択制で、下記のいずれかの上乗せが可能

①試験研究費が5%増加した場合 → 10%上乗せ

②試験研究費割合が10%超の場合 → 0% 〜 10% 

(ハ)試験研究費の範囲拡大

いわゆる「第4時産業革命」による新たなビジネスを生み出すことを後押しすることを目的として、研究開発税制の対象にビッグデータ等を活用した「第4時産業革命型」のサービス開発に係る費用を試験研究費の範囲に含めることとしています。

(ニ)オープンイノベーション型の運用改善

特別研究機関、大学、その他の者と共同で行う研究が共同研究や委託して行う試験研究に要する費用等がある場合には、その会社が負担した特別試験研究費の一定割合について減税を受けることができるとされていますが、この制度の利用促進を図るため、この制度の対象となる費目の拡大や手続きの簡素化などが行われ、適用要件が緩和されました。

②欠損金の繰越控除に係る控除割合の変更

中小法人等を除く法人は欠損金の繰越控除について、一定の制限を受けることとされています。

平成29年4月1日から平成30年3月31日開始事業年度の制限金額は、繰越控除前の所得金額に100分の55の率を乗じて計算した金額とされています。

平成30年3月期の申告については、この割合を使用することとなります。

③所得拡大促進税制の見直し

(イ)概要

企業に賃上げのインセンティブを与えることを目的に所得拡大促進税制について適用要件等の見直しが行われ、平成30年3月期より適用が開始することとされている規定があります。

なお、大企業と中小企業者等で適用要件・控除額が異なることに改正がされました。

この改正内容は平成29年4月1日以後開始する事業年度において適用されることとなっております。

(ロ)大企業について

・適用要件について

所得拡大促進税制の適用を受けるためには、下記の全ての要件を満たす必要があります。

(a)当期の給与等支給額 基準事業年度における給与等支給額 × 105%

(b)当期の給与等支給額 前期における給与等支給額

(c)当期の平均給与等支給額 前期における平均給与等支給額 × 102%

・控除額

下記の(a)+(b)(ただし、調整前法人税額の10%を限度とする)

(a)(当期の給与等支給額 ー 基準事業年度の給与等支給額)× 10%

(b)(当期の給与等支給額 ー 前期の給与等支給額)× 2%

(ハ)中小企業者等について

・適用要件について

所得拡大促進税制の適用を受けるためには、下記の全ての要件を満たす必要があります。

(a)当期の給与等支給額 基準事業年度における給与等支給額 × 105%

(b)当期の給与等支給額 前期における給与等支給額

(c)当期の平均給与等支給額 前期における平均給与等支給額

・控除額

原則、下記の算式により計算した金額が税額控除額として取り扱われます。(ただし、調整前法人税額の10%を限度とする)

(当期の給与等支給額 ー 基準事業年度の給与等支給額)× 10%

ただし、「当期の平均給与等支給額 前期における平均給与等支給額 × 102%」満たしている場合には、下記の(a)+(b)(ただし、調整前法人税額の10%を限度とする)

(a)(当期の給与等支給額 ー 基準事業年度の給与等支給額)× 10%

(b)(当期の給与等支給額 ー 前期の給与等支給額)× 12%

(ニ)用語の意義

・給与等支給額 … 国内雇用者に対して支給する給与等の額のうち、各事業年度の損金の額に算入されるもの

・基準事業年度 … 平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度

そのため、3月決算の法人である場合、一般的には平成25年3月期が基準年度に該当します。

・平均給与等支給額 … 継続雇用者に係る給与等支給額の平均額

・国内雇用者 … 法人の使用人(役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く)のうち、国内事業所に勤務する雇用者として賃金台帳に記載されている者

・継続雇用者 … 適用年度(当期)及びその前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者。例えば、適用年度(当期)の新入社員であったり、前期の退職者はこの継続雇用者には該当しないこととなります。

・中小企業者等 … 次に掲げる法人をいいます。

(a)資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人。ただし、同一の大規模法人に発行済株式等の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式等の3分の2以上所有されている法人は除かれます。

(b)資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

・大規模法人 … 資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。

④役員給与

一定の要件を満たす下記の役員給与について損金の額に算入することができるようになりました。

・リストリクテッド・ストック・ユニット

・パフォーマンス・シェア等

 

 

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