(1)平成30年度税制改正における所得拡大促進税制の改正概要

平成30年度税制改正における改正のうち、所得拡大促進税制の改正は大きなインパクトのあるものになっていると思われます。これまで適用を受けるために充足することが必要であった要件が削除されており、シンプルな制度になっています。

中小企業者等に該当する場合には、平均給与が前年より1.5%増加していれば所得拡大促進税制の適用を受けることができることとされ、基準事業年度において給与を多額に支給しているなどの理由により所得拡大促進税制の適用が受けれなかった企業についても適用を受けることができる可能性が出てきました。

なお、所得拡大促進税制の基本的な考え方について改正前の内容と変更ありません。

青色申告書を提出する法人が、国内雇用者に対して支給する給与等の金額が一定金額増加した場合には、その増価額の一定割合額を法人税額から控除することができる制度になります。
平成30年税制改正において、賃上げ要件については簡素化され、人材教育に投資を積極的に行なっている企業に対して、現在より優遇を行うこととされる改正がされています。
なお、今回の改正により、中小企業者等と中小企業者等以外(以下「大企業」という)で適用要件が異なることになることとなっているためご注意ください。

(2)中小企業者等における所得拡大促進税制

①概要

中小企業者等(適用除外事業者を除く)の適用要件について「賃金増加要件」が一部削除されています。
なお、今回の改正により、大企業においては適用要件に「設備投資要件」が加えられることとなっておりますが、中小企業者等については、この適用要件は加えられていません。
下記(3)の大企業における所得拡大促進税制と比較していずれか有利な方を選択して適用をすることが可能となる予定です。

②適用要件

中小企業者等における所得拡大促進税制は、下記の要件を全て満たす場合にのみ、適用を受けることができるます。

(イ)青色申告書を提出する中小企業者等に該当(ただし、適用除外事業者に該当する場合を除く。)
(ロ)国内雇用者に対して給与等を支給すること
(ハ)(i)平均給与等支給額 – 比較平均給与等支給額
   (ii)  (i) /比較平均給与等支給額 ≧ 1.5%以上

なお、継続雇用者がいない場合には、(ハ)の要件は満たさないとされています。

また、「適用事業除外者」とは、事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均金額が15億円を超える事業者をいいます。

③税制措置

②の適用要件を全て満たす場合には、給与等支給増加額15%の税額控除ができることとされる予定です。
給与等支給増加額とは、適用年度の雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額を言います。

なお、次の(イ)及び(ロ)の要件を満たすときは、給与等支給増加額の 25%の税額控除ができることとされています。

(イ)平均給与等支給額が全事業年度から2.5%増加していること
(i)平均給与等支給額 – 比較平均給与等支給額
(ii)  (i) /比較平均給与等支給額 ≧ 2.5%以上

(ロ)次のいずれかの要件を満たすこと。
(i)教育訓練費 ≧ 前期の教育訓練費 × 110%以上 であること。
(ii)その中小企業者等がその事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと。

(注)控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とされています。

(3)大企業における所得拡大促進税制

①概要

適用要件について「賃金増加要件」の一部について削除されています。
一方で、「設備投資要件」が新たに創設されることとなりました。
教育訓練費が増加した場合には、税額控除額が上乗せされることとされています。

②適用要件

所得拡大促進税制は、下記の要件を全て満たす場合にのみ、適用を受けることができる制度となります。

(イ)青色申告書を提出する法人に該当
(ロ)国内雇用者に対して給与等を支給すること
(ハ)(i)平均給与等支給額 – 比較平均給与等支給額
   (ii)  (i) /比較平均給与等支給額 ≧ 3%以上
(ニ)国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であること。

なお、継続雇用者がいない場合には(ハ)の要件は満たさないものとされます。

③税制措置

②の適用要件を全て満たす場合には、給与等支給増加額15%の税額控除ができることとされています。
給与等支給増加額とは、適用年度の雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額をいいます。

なお、次の要件を満たすときは、給与等支給増加額の 20%の税額控除ができることとされています。

<要件>
教育訓練費 ≧ 比較教育訓練費 × 120%

(注)控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とされています。

(4)用語の意義

①教育訓練費

教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための費用で次のものをいいます。
(イ)その法人が教育訓練等(教育、訓練、研修、講習その他これらに類するものをいう。)を自ら行う場合の外部講師謝金、外部施設等使用料等の費用
(ロ)他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費
(ハ)他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用

②比較教育訓練費

比較教育訓練費とは、前期及び前々期の教育訓練費の額の年平均額をいいます。

③国内設備投資額

国内設備投資額とは、法人が当期において取得等をした国内にある減価償却資産となる資産で当期末において有するものの取得価額の合計額をいいます。

④減価償却費の総額

減価償却費の総額とは、その法人の有する減価償却資産につき当期の償却費として損金経理をした金額(前期の償却超過額等を除き、特別償却準備金として積み立てた金額を含む。)をいいます。

(5)継続雇用者について

平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の計算の基礎となる継続雇用者については、その範囲が見直しされており、当事業年度及び前事業年度の全期間の各月において給与等の支給を受けた雇用者で一定のものをいうとされています。

 

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