概要

国外関連者と取引を行う際、移転価格税制の適用の検討を行う必要があります。移転価格税制の検討には、独立企業間価格を算定する必要があります。

棚卸資産に関する独立企業間価格の算定方法について、このページにて解説を行います。

Question

棚卸資産に関する取引の独立企業間価格算定方法について教えてください。

Answer

(1)独立企業間価格について

独立企業間価格で代表的なものは下記の通りです。
 ①独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method:CUP法)
 ②再販売価格基準法(Resale Price Method:RP法)
 ③原価基準法(Cost Plus Method:CP法)
 ④取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method:TNMM)
 ⑤利益分割法(Profit Sprit Method:PS法)
このうち、①②③のことを基本三法と呼ばれることがあり、特に代表的な独立企業間価格算定方法とされます。

(2)基本三法について

①概要
独立企業間価格の算定方法は基本三法として下記方法があげられ、これらは代表的な独立企業間価格算定方法とされます。
 (イ)独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method:CUP法)
 (ロ)再販売価格基準法(Resale Price Method:RP法)
 (ハ)原価基準法(Cost Plus Method:CP法

②独立価格比準法について
 独立価格比準法とは、国外関連取引に係る価格と比較対象取引(下記の要件に該当する取引)に係る価格を比較し独立企業間価格を算定する方法です。
 ・特殊の関係にはない買手及び売手の取引であること
 ・国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産取引であること
 ・国外関連取引と、取引段階、取引数量等が同一の状況下で行われた取引であること

③再販売価格基準法とは
 再販売価格基準法とは、国外関連取引の買手が、国外関連者より購入した棚卸資産を第三者に再販売する時の価格(再販売価格)から、通常考えられる利益を控除した金額をもって独立企業間価格とする方法です。
 例えば日本本社から棚卸資産を買った中国子会社が、外部の第三者に当該商品を200円で再販売したとします。
 その取引で通常想定される利益率が10%の場合180(200×(1-10%)=180)が独立企業間価格となります。
 したがって、中国子会社は当該製品を180で日本本社から購入すべきとなります。
 この再販売価格基準法は、独立価格比準法とは異なり、棚卸資産は同種でなくとも類似のものであればよく、再販売者の果たす機能の類似性を重視した方法となります。

④原価基準法とは
 原価基準法とは、国外関連取引に係るマークアップ率(売上総利益/売上原価)の水準と比較対象取引に係るマークアップ率の水準を比較する方法です。
 この原価基準法は、独立価格比準法とは異なり、棚卸資産は同種でなくとも類似のものであればよく、棚卸資産生産者の果たす機能の類似性を重視した方法となります。

(3)基本三法に準ずる方法について

①基本三法に準ずる方法の概要
 独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法を総称し、基本三法と呼ばれておりますが、この基本三法とは別に、租税特別措置法において「基本三法に準ずる方法」が規定されています。
 基本三法の適用に際しては、比較可能な取引の選定に際し非常に高い比較可能性が要求されます。
 一方、基本三法に準ずる方法とは、基本三法の考え方から乖離しない限りにおいて適用が認められる方法です。

②基本三法を適用しない理由
 基本三法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法)はとても理論的な方法である一方、実際に実務上適用することが困難な場合が多々あります。
 したがって、実務上の要請に鑑み、基本三法を厳密に適用することに替えて、要件を少し緩和した設計されたのが、この基本三法に準ずる方法です。

③移転価格参考事例集での位置づけ
 基本三法に準ずる方法は、基本三法の考え方から乖離しない限りにおいて、取引内容に適合した合理的な方法を採用する道を残したものと解されております。
 すなわち、法令の規定に準じて基本三法を適用した場合には比較対象取引を見いだすことが困難な国外関連取引について、その様々な取引形態に着目し、合理的な類似の算定方法とすることで比較対象取引を選定できる場合や、合理的な取引を比較対象取引とすることで独立企業間価格を算定できる場合があり、このような場合に適用を行うものとなっております。

④基本三法に準じる方法の例示
 例えば、下記のような方法が、 基本三法に準じるものとされます。
  (イ)国外関連取引と比較可能な実際の非関連当事者間取引が見いだせない一方、取引相場や市場価格等の客観的な指標に基づいて独立企業間価格を算定する方法
  (ロ)基本三法を適用する上での比較対象取引が複数ある場合において、それらの取引に係る価格又は利益率等の平均値等を用いて独立企業間価格を算定する方法
  (ハ)他社から購入した製品と自社製品をセットにする形で、国外関連者に販売した場合において、 例えば、独立価格比準法と原価基準法を併用して独立企業間価格を算定する方法
  (ニ)棚卸資産を特殊関連者を経由して非関連者に販売する場合において、非関連者への販売価格から再販売価格基準法を適用する場合の通常の利潤の額を控除して関連者への販売価格を設定し、これに基づき国外関連取引に係る独立企業間価格を算定する方法

(4)基本三法に準ずる方法の具体的な内容について

①概要
 基本三法以外の方法として下記方法があげられます。
 (イ)取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method:TNMM)
 (ロ)利益分割法(Profit Sprit Method:PS法)

②取引単位営業利益法について
 基本三法のように独立企業間の取引価格を直接算定するのではなく、独立企業間の取引の結果生ずると想定される営業利益の水準を算定し、それと検証対象企業の利益水準が同じであることを理由として、個々の取引価格の移転価格上の妥当性を確認する方法です。
 棚卸資産等の厳格な類似性が要求される独立価格比準法や、売手・買手の果たす機能等の類似性が要求される再販売価格基準法及び原価基準法と比して、比較的容易に利用することができます。
 例えば、比較対象取引候補に関する情報入手が困難な場合には、基本三法を適用する上で必要な比較可能性が認められない場合がありますが、取引単位営業利益法においては、比較対象取引として採用しうる場合があり、同法を適用するケースが増加する傾向にあります。

③利益分割法について
利益分割法として、下記の3つの方法が定められております。
 (イ)比較利益分割法
   比較利益分割法とは、国外関連取引と類似状況下で行われた非関連者間取引に係る非関連者間の分割対象利益に相当する利益の配分割合を利用し、当該国外関連取引に係る分割対象利益を法人及び国外関連者に配分することにより独立企業間価格を算定する方法のことをいいます。
   ただし、親子会社間と同様の機能、リスク、無形資産の関係となっている独立第三者間取引情報を見出し、これに沿った利益配分が適正ということになりますので、そのような情報が得られることは実務上は難しいことから、比較利益分割法が利用される事例は非常に限られたものとなります。

 (ロ)寄与度利益分割法
   寄与度利益分割法とは、国外関連取引に係る分割対象利益等を、その発生に寄与した程度を推測するに足りる国外関連取引の当事者に係る要因に応じてこれらの者に配分することにより独立企業間価格を算定する方法のことをいいます。
   この方法は、比較対象となる非関連者間取引を見出す必要がなく、企業内部の情報のみで適用することが可能である点が特徴として挙げられます。
   ただし、寄与度を測る分析において客観的な基準を設定するのは、通常困難なものとされております。

 (ハ)残余利益分割法
  残余利益分割法とは、取引の当事者はそれぞれ製造機能、販売機能に見合う通常の利益は確保するであろうとの考え方に基づき、通常の利益を超える部分について、それぞれの関連当事者間の寄与度に応じて分割するという方法です。
  残余利益分割法の計算の流れは下記のようになります。

  <残余利益分割法の計算方法>
   (ⅰ)国外関連取引に係る分割対象利益等(※1)を算定する
   (ⅱ)分割対象利益等から、各当事者の基本的利益(※2)を配分し、重要な無形資産を要因とする利益(残余利益等)を算定する
   (ⅲ)残余利益等を合理的な基準で、各当事者に配分する
   (ⅳ)配分された結果と、実際の国外関連者取引利益を比較し、差額が課税対象となる

   (※1)分割対象利益等とは、国外関連者間取引での各当事者の営業利益の合計となり、共通費用がある場合は、売上高、資産価額、使用人の数等の合理的な基準で国外関連者間取引に案分する必要があります。
   (※2)基本的利益とは、重要な無形資産を有しない非関連者間取引で通常得られる利益であり、例えば、同種の事業を営んでおり、事業規模等が類似する法人の営業利益率等で示されます。

  なお、残余利益分割法は、計算手続が煩雑であるとともに、計算の結果に与える前提条件(例えば、基本的利益の水準、残余利益に係る分割要因の測定方法等)が多く、移転価格リスクの不確実性を解消する趣旨で同法を適用する場合には、一般的に事前確認制度(APA)を活用する場合が多くみられます。

【参考法令等】

租税特別措置法66条の4②

 

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