(1)概要
決算月とは事業年度終了の日のことをいい、その事業年度を一つの期間として会社は決算を行なっていくことになります。
決算月が終了した日から原則2月以内に法人税、消費税、住民税、事業税、事業所税等の提出義務がある申告書を提出する必要が生じ、かつ、納税の義務も生じます。
会社計算規則上、事業年度は1年以内の期間でしたら、何月でも問題ありません。(通常は1年の期間を事業年度とします。事業年度を変更する場合には、その変更後の最初の事業年度は1年6月まで延ばすことが可能です。)
ただし、法人税法においては、1年を超える事業年度が生じている場合には、その事業年度開始の日から1年ごとに区分した期間を一つの事業年度として申告等を行う必要があります。この場合において、最後に1年未満の期間が生じた時は、その1年未満の期間を一つの事業年度とするとされています。
今回はこの決算月(事業年度)の変更について解説をしたいと思います。
(2)決算月の変更手続き
決算期はいつでも変更することができます。
変更の手続きを下記に記載しておりますのでご確認ください。
①株主総会の決議
ほとんどの会社の事業年度は定款に定められていると思います。
そのため決算月の変更を行うために株主総会の決議を行う必要があります。
なお、定款の変更は株主総会の特別決議(※)が必要となる事項になります。
一般的には臨時株主総会にて決議を行うケースが多いと思います。
決議を行なった記録として「臨時株主総会議事録」を作成する必要があります。
②税務署などへの届出
①において作成した「臨時株主総会議事録」のコピーを添付した異動届出書を「税務署」「都道府県税事務所」「市区町村」に提出する必要があります。
異動届出について説明されている国税庁のリンクを下記に記載しておきます。
なお、「都道府県税事務所」「市区町村」に提出する異動届出書は、提出する地方公共団体により様式が異なります。
そのため、提出する地方公共団体のホームページ等を検索エンジンで検索をして、必要な届出書を入手していただければと思います。
(※)特別決議とは、議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席して、その出席した株主の議決権数の3分の2以上の賛成をもって可決となる決議になります。
特別決議は、その会社経営の基盤となる議案について求められるものになり、今回の定款変更の他には、会社の合併・解散、事業譲渡、取締役・監査役の解任も、この特別決議が求められています。
(3)決算期変更のメリット・デメリット
①メリット
・期末直前に利益が生じそうな場合、決算月を前倒しすることにより、利益を翌期にずらすことができる(例:12月決算の会社で、12月に多額の利益が生じることが予定されている場合、11月決算に変更することにより、12月の利益を翌期扱いすることができる。これにより、ゆっくりと節税対策を検討することができる。)
・定期同額給与の改定時期を早めることができる
②デメリット
・事業年度の期間が12月にならないことから、売上や利益について期間比較することが困難になる
・決算期が早くなることから、その分税金も早く収める必要が出ててくる
・消費税の納税義務の判定に影響を及ぼす可能性がある
・年払いの経費(家賃・保険料)を毎年期末付近に支払っている場合、当期の費用にならない
(4)その他
①登記について
決算月(事業年度)は登記事項になっておりませんので、法務局への届出などは行う必要がなく、登記等の費用は発生しません。
②決算期をいつにするべきか
決算期をいつにするべきかは、一概に何月が良いとは言うことができません。
自身のことのみ考慮するのであれば、決算期間中は税理士対応を行わなければならないことを考え、繁忙期と重ならない月にするのも一つだと思います。
また、一般的な税理士は、年末調整が始まる12月から3月決算の対応がある5月まで繁忙期だと思われます。
そのため決算月を、6月から11月までの間にすることにより、税理士サイドも余裕があると思いますので、その分ミスが生じにくくなると考えられます。
(5)まとめ
決算月の変更は驚くほど簡単にできることがお分かりになったでしょうか?
専門家に依頼することなく、ご自身でご対応することも可能な手続きであると思います。
決算月変更を変更する場合は、メリット・デメリットをよく検討した上で実行するようお願いいたします。
なお、決算月の変更する場合には、事前に顧問税理士にお話ししておくことをお勧めいたします。
【参考法令等】
法人税法13条
会社法309条②、466条
会社計算規則59条②